東電社長が海外紙に語った再建への道~信頼回復と新規投資の二本柱~

 東京電力の広瀬直己社長がロイターとブルームバーグのインタビューに応じた。大津波を伴った2011年3月の東日本大震災で、東京電力の福島第一原子力発電所は被災し、この3年間、同社は補償による損失が増大する一方で、放射能や汚染水の漏出への対応に追われてきた。

【従業員のモラル確保が重要】
 広瀬社長は従業員のモラル確保が重要な問題だと語る。ブルームバーグによれば、2011年の事故以来の退職者は、2013年3月で2000名以上にもなり、同社は倒産の危機に瀕したという。海外プロジェクトは縮小され、従業員の給与やボーナスもカットを余儀なくされた結果、有能な若手社員が数多く退職したのだ。事故処理に専念するため、東電は電力事業を分離・売却すべきだとの意見があるが、ロイターに対して広瀬社長は、「避難中の方々への補償や除染作業員への支払い等、為すべきことが多い一方で、作業員の安全を確保し、責任感を維持していかなくてはならない」として、現状では不賛成であると語った。

【今後の成長戦略】
 ブルームバーグによれば、東電は約2.7兆円の投資を計画中である。これは福島原発の事故を乗り越えて成長への道を探るもので、提携先の他に金融機関からの借り入れなどを合わせた戦略的投資になるという。同社にはシェールガス開発プロジェクトのオファーがいくつか寄せられており、2014年度早期に投資判断を行うとしつつも、広瀬社長は詳細を明らかにしなかった。また東電は、福島原発事故後、公募社債の発行を差し控えてきたが、2016年4月1日には再開したい意向だ。

【失った信頼を回復できるか?】
 そのためにも重要なのは信頼回復である。ブルームバーグによれば、広瀬社長は「福島での責任を果たすには資金が必要であり、それは企業価値を向上させることでお返ししなくてはならない」と述べた。現在、日本では48基の原子炉が停止中である。原発をどうするかは日本にとって喫緊の課題であり、休業中の原子炉の再開に関する再建計画の信頼性こそが、再開反対派からの批判をかわす避雷針になるだろうという。安倍首相は18日行われたNHKのインタビューで、「東電任せにはせず国も前面に出て、判断すべきは決断して福島の復興を加速させたい」と語った。

【都知事選の試練】
 2月9日に実施される東京都知事選挙では、原発容認政策の是非が争点化してきており、小泉元首相が支持する、同じく元首相で反原発の細川候補の勝敗が民意によるテストになるだろうとブルームバーグは伝えている。

Text by NewSphere 編集部