ウクライナ、ロシアの石油施設とタンカー攻撃 燃料インフラへの圧力強める
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アメリカのドナルド・トランプ大統領が、都市防衛のためにウクライナにパトリオット防空システムの製造ライセンスを供与すると約束した翌日の9日、ウクライナのドローンがロシア国内の石油施設を新たに攻撃し、アゾフ海では石油タンカー2隻を炎上させた。
一方、ウクライナ政府高官は、同国がパトリオット迎撃ミサイルを生産できるようになるまでには、1年以上かかる可能性があるとの見方を示した。
ロシア政府は、ライセンス供与の合意はアメリカ政府の「相反する姿勢」を反映しているとする一方、ロシアが4年以上前に始めた戦争を終わらせるため、和平合意の仲介を目指すトランプ氏の取り組みは評価していると述べた。
ロシア各地の製油所やその他のインフラに対するウクライナのドローン攻撃により、複数の地域でガソリン不足や配給制が生じ、給油を待つ車列が何時間も続くなど、広範な燃料危機が起きている。これに対し、ロシア政府はキーウなどの都市への爆撃を激化させており、弾道ミサイル攻撃に対するウクライナの脆弱さが浮き彫りになっている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアのインフラに対する今回の攻撃について、戦闘停止を拒むロシア政府への対抗措置として実施している「長距離制裁」作戦の一環だと説明した。
ゼレンスキー氏は「我々は以前からロシアに戦争を終わらせるよう提案してきた。終結が1日遅れるごとに、戦争が始まった場所、つまりロシアに戦争の実感をもたらさなければならない」と述べた。
◆ロシア西部の石油貯蔵施設と海上のタンカーを攻撃
ヴィタリー・コロリョフ知事代行によると、ウクライナのドローン攻撃により、ロシア西部の都市トヴェリにある石油貯蔵施設で火災が発生した。南部スタヴロポリ地方のヴャズニキでも、ドローン攻撃によって石油貯蔵タンクが炎上し、周辺の集合住宅の住民が避難を余儀なくされたと、ウラジーミル・ウラジーミロフ知事が述べた。
ロストフ州のユーリ・スリュサリ知事によると、アゾフ海ではウクライナのドローンが石油タンカー2隻を炎上させた。うち1隻は依然として燃えており、乗組員は避難したという。
石油タンカーへの攻撃はここ数日相次いでおり、今回の攻撃も、ロシアが2014年に違法に併合したクリミア半島への燃料供給を断つことを狙ったウクライナの作戦の一環である。
ゼレンスキー氏によると、ウクライナ軍はスタヴロポリとトヴェリの施設に加え、ウファの施設を含むロシア内陸部の燃料インフラや、ウクライナに近いロストフ州の石油積み出しターミナルも攻撃した。
ロシア国防省は、8日深夜から9日未明にかけて、防空部隊がウクライナのドローン73機を撃墜したと発表した。
ウクライナ空軍は、ロシアが長距離攻撃用ドローン94機と弾道ミサイル2発を発射したと発表した。ドローン72機は電子妨害を受けるか迎撃されたが、残る19機とミサイル2発により、13か所で被害が出たという。
◆パトリオットの国内生産には数か月
トルコで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて8日に行われたゼレンスキー氏との会談で、トランプ氏は、アメリカがウクライナの長年の要請に応じ、パトリオット防空システムの製造ライセンスを供与すると述べた。また、トランプ氏はゼレンスキー氏について「素晴らしい仕事をしている」と称賛し、これまでの批判的な姿勢から大きく転じた。
しかし、ウクライナ国防相顧問のセルヒー・ベスクレストノフ氏は、移動式地対空ミサイルシステムの国内生産体制を整えるには、数か月かかるとの見方を示した。
ベスクレストノフ氏は自身のテレグラムチャンネルで、通常、製造ライセンスの供与には、製造工程に関する技術文書、専門家の訓練、部品供給業者の連絡先、製造開始を支援する外国人コンサルタントなどが伴うと説明した。
最大の障害は、ウクライナの技術力や組織力ではなく、時間になるだろうと付け加えた。
ベスクレストノフ氏によると、最近のメディア報道では、2つのボトルネックが指摘されている。1つは、一部の外注部品の生産に12~24か月かかる可能性があること。もう1つは、ボーイングやL3ハリスが手掛ける部品を含む主要部品の世界的な生産能力が限られていることだ。
アメリカ国防総省は生産能力を拡大するための契約を締結しているものの、それが実際の増産につながる時期は依然として不明だという。
ゼレンスキー氏は9日、ワッツアップ(WhatsApp)を通じた記者からの質問に対し、「アメリカは、ウクライナにはこれを実行する用意があると認めた」と述べた。
さらに「大統領との合意を受け、今後は双方の実務チームや外交官、外務省、国防省が、残るすべての技術的な詳細について合意する必要がある。合意が早くまとまれば、それだけ早くパトリオットを生産できるようになる」と語った。
ドイツもパトリオットシステムの製造ライセンスを保有している。2022年には、レイセオンとMBDAドイツが、ドイツ国内でパトリオットのGEM-Tミサイルを製造する計画を発表したと、当時のニュースリリースは伝えている。ドイツの工場で生産し、最終的には他の欧州の同盟国にも供給することが目標とされた。
ウクライナの軍事専門オンラインメディア『ディフェンス・エクスプレス』によると、同工場は9月に開設される予定で、最初のミサイルは来年納入される見通しだ。最初の供給先はウクライナになるという。
◆ロシア政府「ウクライナの攻撃は和平を早めない」
パトリオットの製造ライセンスをめぐるトランプ氏の発言について、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は曖昧な反応を示し、ロシア政府はアメリカによるウクライナへの軍事支援を認識している一方、和平実現を支援するというアメリカ政府の表明は評価していると述べた。
ペスコフ氏は記者団との電話会見で「アメリカの立場はいくぶん相反している」と述べた。
そのうえで「それでも欧州諸国とは異なり、アメリカは和平プロセスに向けた動きを促進しようとする意欲を保っている。時には見当違いだったり、誤っていたりするかもしれないが、我々はその意欲を誠実なものと見ている。我々はこれを歓迎する。アメリカが、大きな困難を抱えながらもイランをめぐる状況に対処できれば、ウクライナ問題での取り組みも再開されることを期待している」と語った。
ロシア国内に対するウクライナの攻撃が和平合意を早める可能性があるとのトランプ氏の発言について問われると、ペスコフ氏は、ウクライナが攻撃を重ねるほど、ロシア政府は「特別軍事作戦」と呼ぶ軍事行動を通じ、ウクライナ領内により広い「安全地帯」を設けようとすることになると改めて主張した。
ペスコフ氏は「エスカレーションと軍事的圧力が、平和的解決への道を開くと考えるのは誤りだ」と述べた。
さらに「さらなるエスカレーションは、特別軍事作戦を長引かせる可能性がある。どの程度長引くかは正確には言えないが、我々は、より広い安全地帯、より広い緩衝地帯を設けざるを得なくなる」と語った。
ウクライナはアメリカやその他の同盟国に対し、将来の和平合意の一環として、NATO軍の配備を含む拘束力のある安全の保証を提供するよう求めている。一方、ロシアは、ウクライナへのNATO軍の駐留を強くけん制し、駐留部隊を正当な攻撃対象と見なすと表明している。
8日、安全の保証の一環としてウクライナ上空に飛行禁止区域を設定する用意があるかと問われたトランプ氏は、「必要なら、そうする」と答えた。ただし、和平合意が成立すれば、その必要はなくなる可能性があるとも主張した。
ゼレンスキー氏の隣に座ったトランプ氏は、「合意がまとまるときは、安全の保証があろうとなかろうと、まとまるものだ」と語った。
これについてペスコフ氏は、飛行禁止区域を設定しようとすれば、「NATO軍がウクライナ領内で活動することに等しい。まさにそれこそが、特別軍事作戦が阻止しようとしているものだ」と警告した。
ペスコフ氏によると、ウラジーミル・プーチン大統領は「対話に前向き」で、トランプ氏と再び電話会談を行う用意があるという。




