【分析】中国の弾道ミサイル実験、狙いはアメリカ
南太平洋で、中国の原子力潜水艦から発射される長距離弾道ミサイル(7月6日)|Li Xiangchao / Xinhua via AP
中国が6日、南太平洋に弾道ミサイルを発射した。核弾頭を搭載可能な兵器システムとしては異例の実験で、国際社会から非難を浴びた。
太平洋の公海では、2年前にも同様のミサイル発射が行われている。人民解放軍による今回の実験は、広大な太平洋地域を大国間の勢力争いの舞台にしないよう訴えてきた小さな島国の指導者らからも注目を集めたが、専門家によると、中国政府がメッセージを向けた相手は、事実上アメリカ一国だった。
シンクタンク、カーネギー国際平和財団の核政策プログラム上級研究員、トン・ジャオ氏は、「最も重要なメッセージは、人民解放軍が非常に強力な戦略核能力を備えた強大な軍隊になりつつあるということだ」と語った。
今回の実験では原子力潜水艦からミサイルが発射され、中国の「核の三本柱(ニュークリア・トライアド)」のうち、海上配備の核戦力が示された。核の三本柱とは、陸・海・空から核兵器を運用する能力を指す。
さらに、今回の実験は、中国軍がいわゆる「第2撃能力(報復攻撃能力)」を有していることも示したと、オーストラリアのクロフォード公共政策大学院の研究員、ドミニク・ミーガー氏は指摘した。これは、中国が先に攻撃を受けたとしても、海上や陸上に発射手段を残し、反撃する能力を維持できることを意味する。
中国政府は、今回の発射は年次演習の一環だと説明しており、今後も同様の発射を実施する可能性を示唆している。
全米アジア研究所の非常勤研究員、K・トリスタン・タン氏は電子メールで、「これは単発の出来事ではなく、組織的な動きだとみている」と述べた。
今回のミサイル実験は、中国が原子力潜水艦の増強を急ぐなかで実施された。シンクタンクの国際戦略研究所の報告書によると、過去5年間、中国はこの種の潜水艦をアメリカよりも速いペースで建造している。
◆太平洋諸国に暗い核の歴史を想起させる発射
しかし、公海、とりわけ核実験を禁じる条約の対象海域を使用したことに、地域の国々から批判が上がった。南太平洋は戦略的に重要で、漁業資源や鉱物資源も豊富なため、各国の利害がぶつかる海域となっている。
太平洋諸国にとって、核実験はとりわけ過去の被害を想起させる。アメリカ、イギリス、フランスはいずれも太平洋で核実験を行い、環境を汚染したほか、がんや先天性異常などの健康被害を引き起こした。一部の島国では、何世代も経た今なお、こうした健康被害が報告されているという。
ミーガー氏は、「これらの実験は激しい怒りを招き、その後の実験を防ぐための条約につながった。核実験禁止条約やラロトンガ条約などだ」と説明。「それ以来、この種のミサイル実験は行われてこなかった」と述べた。
6日に発射されたミサイルは、1986年に発効したラロトンガ条約によって設けられた南太平洋非核地帯に着弾した。同条約は南太平洋を非核地帯とするものだ。中国は1987年、同地帯での核実験や、域内に領土を持つ締約国への核兵器の使用・威嚇を禁じる関連議定書を批准した。
ソロモン諸島のマシュー・ウェール首相は7日、首都ホニアラで記者団に対し、「中国はソロモン諸島の良き友人だが、これは友人がすることではない。私たちの地域にとって……良いことではない」と述べた。
アメリカ軍は現在も太平洋で核搭載可能なミサイルの発射実験を行っているが、条約の対象海域は避けているとミーガー氏は説明した。
◆「事前通告が不十分」と各国指導者が批判
オーストラリアとニュージーランドは、いずれも今回の実験について十分な事前通告を受けていなかったと述べた。日本なども、透明性を欠いた形で実施されたと指摘している。オーストラリアとニュージーランドは南太平洋の有力国で、中国政府が地域で影響力を強めようとする動きへの懸念を募らせている。
中国と太平洋の小さな島国との二国間協定を受け、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も独自の外交攻勢に乗り出した。オーストラリアは過去1年間に、バヌアツ、フィジー、パプアニューギニアと防衛・安全保障協定を締結している。
アルバニージー氏は7日、政府高官と会談していたホニアラで記者団に対し、今回のミサイル発射を「地域を不安定化させる中国の挑発的な行為だ」と強く非難した。オーストラリアとソロモン諸島は現在、包括的な条約の締結に向けて交渉を進めている。
アルバニージー氏はさらに、「今回の実験が、ほとんど事前通告のないまま昨日行われたという事実は、本当に懸念すべきことだ」と述べた。
中国は自らの行動を擁護し、周辺国には適切に事前通告したと主張している。中国国防省は7日の声明で、「中国は事前に関係国へ通知しており、中国軍の公開性と透明性を示すものだ」と述べた。
専門家によると、国際的な基準を挙げるとすれば、「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」だという。同規範は、弾道ミサイルとその使用をめぐる行動原則を定め、各国に少なくとも24時間前の通告を求めているが、法的拘束力はない。さらにタン氏によると、中国はHCOCに参加していない。
発射されたミサイルの種類や正確な発射時刻をめぐっては、なお多くの臆測が飛び交っている。
人民解放軍は情報をほとんど公表しないことで知られているが、台湾国家安全会議の秘書長は8日、今回使われたのは中国南部の広東省沖から発射された「JL2」ミサイルだったと述べた。JL2は潜水艦発射型の旧型弾道ミサイルである。
一方、中国国営メディアは、JL2よりも射程が長い「JL3」だった可能性が高いとする専門家らの見解を紹介した。国営中央テレビ(CCTV)のインタビューに応じた軍事専門家、シャオ・ヨンリン氏は、「JL3の射程であれば、太平洋西部から東部の目標を攻撃できる」と語った。
中国は主要な軍事大国になるにつれ、国際社会からこれまで以上に厳しい監視を受けることも想定しなければならない。核問題の専門家であるジャオ氏は、「中国が主要な軍事大国になりたいのであれば、アメリカ、イギリス、フランスなどと同じ基準を適用されるべきだ」と述べた。
By HUIZHONG WU Associated Press




