「ロシア有利に戦況変えつつある」新兵器・光ファイバードローン 従来の欠点克服
Drop of Light / Shutterstock.com
ロシア軍がウクライナ戦争に「光ファイバードローン」を投入し、戦況を大きく変えつつある。電波妨害に強く、高画質映像を送信できることから、ウクライナに対し優位にあるという。
◆電波妨害に強い「恐ろしい新兵器」
電波妨害に弱いという従来のドローンの致命的欠点を克服した新兵器が登場した。英BBCは光ファイバードローンを「ウクライナ戦争を変える恐ろしい新兵器」と表現している。この新兵器の特徴は、無線ではなく光ファイバーケーブルで操縦される点にある。ドローンの底部には長さ数十キロのケーブルが取りつけられており、映像をオペレーターに送るほか、制御信号を受信する。
ウクライナ陸軍「第68独立猟兵旅団」の「モデレーター」と呼ばれるドローン技術者はBBCに対し、電波でコントロールしないため、「電子妨害装置によってジャミングされないということです」と説明している。
米シンクタンクのアトランティック・カウンシルも、光ファイバードローンは「ロシアに有利な形で戦況を変えつつある武器」と述べている。ロシア軍は電子戦で優位に立ち、戦場のバランスを変えつつあるという。
◆断線の弱点があるが
米軍事メディア『ウォーゾーン』によると、ウクライナも光ファイバードローンの採用に動いている。光ファイバーの断線のリスクなどの弱点もあるが、それでも攻撃に成功した例があり、目標の命中率は約50%あるとウクライナ国家警備隊アゾフ第12特殊部隊旅団の無人システム大隊司令官「ヤス」は述べている。
一方、BBCが取材したウクライナ東部の町ロドィンスケでは、ロシアの光ファイバードローンが日常的に飛来し、脅威にさらされている。取材チームが町に到着してわずか数分で、ロシア軍のドローンに遭遇したという。
光ファイバードローンが投入されて以降、ウクライナの兵士たちは以前よりもはるかに長期間、前線の陣地にとどまることを余儀なくされている。BBCによると、以前は3〜7日ごとに交代していたが、現在では31日から最長で120日間に延びているケースもあるという。
◆ドローン競争でロシアが優位に
両陣営の間では現在、熾烈な技術競争が繰り広げられている。前述の大隊司令官はウォーゾーンに対し、「ロシアは2024年春に光ファイバーワイヤーをFPVドローンに使い始め、ウクライナもすぐに追随した」と説明している。
だが、アトランティック・カウンシルによると、現在はロシアが優位に立っている模様だ。ロシアは膨大なリソースを投入し、光ファイバードローンやカミカゼ(自爆)ドローンなど、特定の武器カテゴリーの大量生産に集中させている。一方、ウクライナは小規模なベンチャー企業が多種多様なドローンを模索している状況だ。
アトランティック・カウンシルは、現在はロシアが夏の攻勢を進めている最中であり、そのなかで光ファイバードローンが重要な役割を果たす可能性があると指摘している。クルスク地域で効果を示した光ファイバードローン戦術が前線全体に展開されれば、ロシア軍はウクライナの防衛線を突破し、膠着状態を破る可能性があると分析している。
小さなドローンに細いケーブルをつけただけの光ファイバードローンだが、ウクライナにとって大きな危機となっている。