空腹でふらつく子供、授乳できない母親…ガザの飢餓危機

ガザ地区ハンユニスの避難民キャンプ(18日)|Abdel Kareem Hana / AP Photo

 イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区封鎖が2ヶ月半を超え、国連機関が飢饉(ききん)の危機を警告する事態となっている。現地では子供が栄養失調で命を落とし、12歳の少女が家族の食料を探し回るなど、深刻な人道危機が広がっている。

◆12歳の少女が家族の命を支える
 ガザでは飢饉の危機が広がり、子供たちの日常は大きく変わった。CNN(20日)によると、ガザ北部に住む12歳のヤナさんは、1年以上前に兄がイスラエル軍の狙撃手に殺されて以来、家族の食料と水を確保する役割を担っている。心臓病を抱える父親に代わり、彼女は重い水バケツを運び、食料を探し回る日々を送っている。

 「父が疲れないよう、強くなりたい。父は年老いていて心臓病があるの。バケツを持とうとすると倒れてしまうから」とヤナさんはCNNに語った。彼女は水を求めて何時間も列に並ぶが、時には何も手に入れられないまま家に戻ることもあるという。

 めいのジャナットちゃんは、栄養失調で命を落とした。ジャナットちゃんが生後6週間のときにイスラエルがガザ地区の全面封鎖を実施。粉ミルクや医薬品など生活必需品の搬入が途絶えたという。母親のアヤさんも栄養不足で母乳の出が悪くなり、赤ちゃんは体重が減り続けた。(CNN)

◆「すべての家庭に飢饉の恐怖」
 AP通信が現地の支援活動家を取材した記事によると、物資不足のため、粉ミルクや栄養食品を分け合い、補助食品も1歳未満の子どもにしか与えられなくなっている。母親たちは授乳もできず、危険な砂糖水に頼らざるを得ない。市場の小麦粉は腐敗していて高価だが、それでも親たちは子供の空腹を満たすために命がけで手に入れようとする。

 水の配給も1人1日5リットルに制限され、飲用・衛生・調理の間で選ばなければならない。子供たちは空腹でふらつき、ごみをあさって食べ物を探している。援助団体も食料の備蓄を配り終えた。住民の間では、子供用の栄養バーを大人が求めるほど飢えが深刻で、支援活動家は「飢饉の恐怖がすべての家庭にある」と語っている。

◆支援物資遮断で広がる飢餓
 このように飢餓の原因は、支援物資の遮断にある。イスラエルは3月にハマスとの停戦を破棄し、ガザへのすべての支援物資を遮断した。イスラエル側はこの封鎖について、ハマスに人質解放の圧力をかける狙いがあると説明しているが、多くの国際機関は「飢餓を戦争の武器として使用している」としてイスラエルを批判している。

 国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」の緊急コーディネーター、レイチェル・カミングスはCNNの取材に、「人道支援団体は栄養失調の治療に関する十分な経験と知識を持っているが、ガザへの食料搬入と、子供たちへの意図的な攻撃を止めることが必要だ」と語った。

 国連機関は今月初め、「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の指標を発表し、ガザ地区の住民の約5分の1が9月末までに最も深刻な段階である「飢饉」(フェーズ5)に陥る可能性があると警告している。

◆イスラエル内部でも認識される危機
 イスラエル国内においても、ガザの飢饉の深刻さは一部で認識されつつある。ニューヨーク・タイムズ紙(13日)によると、イスラエル軍の一部将校らは、支援物資の供給が数週間以内に回復しなければ、ガザのパレスチナ人がより広範囲な飢餓状態に陥ると結論づけている。

 一方、イスラエルは18日、ガザへの「基本的な」量の食料搬入を認めると発表した。しかし、19日に許可されたのはわずかトラック5台分のみであった。人道支援団体は、最も困窮している人々に食料を届けるには、1日あたりトラック500台が必要だと指摘している(AP)。

 アメリカを除く安保理の全メンバーがイスラエルに対し、即時のガザへの援助許可を要求している。国際社会からの圧力が強まるなか、援助再開に向けた動きは始まったものの、必要量には程遠い状況が続いている。

Text by 青葉やまと