「中国空軍力の再評価必要」専門家を驚かせたJ10C戦闘機の実力
パキスタン空軍のJ10CE|rehan waheed / Shutterstock.com
インドとの衝突でパキスタン空軍は、中国製J10C戦闘機を初めて実戦投入した。インド空軍機を撃墜したとされ、中国製兵器の実力を示す事例として注目を集めている。
◆初の実戦投入
米軍事メディア『ウォーゾーン』(15日)によると、パキスタンはインドとの最近の衝突で中国製J10C戦闘機を使用し、複数のインド空軍機を撃墜したと主張している(インド側は否定)。パキスタンのダール副首相兼外相は議会で、パキスタン空軍の戦闘機がフランス製ラファール戦闘機を撃墜したと述べ、中国側に報告したとされる。
英ガーディアン紙(14日)は、この衝突によってJ10C戦闘機とPL15ミサイルが世界で初めて、実戦で使用されたと報じている。軍事アナリストたちにとって、中国製兵器の実戦での能力を評価する機会ともなった。
◆J10Cの性能評価
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)の上級研究員ジャスティン・ブロンク氏はウォーゾーンに対し、「J10Cは、大きさ・搭載能力・機動性の点で、近代化されたF16C/Dブロック50と概ね同等だ」と評価している。
ブロンク氏によれば、J10Cはアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーと長距離空対空ミサイルPL15を組み合わせており、これが最大の特長となっている。同氏は「F16とそれが運用するAMRAAMは、レーダーとミサイルの観点から見ると、J10CEとPL15に比べ、最大射程およびノー・エスケープ・ゾーン(回避不能領域)が明らかに短い可能性が高い」と指摘する。(同)
◆中国製兵器の評価向上
この衝突によって中国製兵器に対する長年の認識が覆され、西側兵器に劣るという見方が見直され始めている。
ブルームバーグ(13日)によると、台湾の国防安全研究院の研究員シュー・シャオフアン氏は、「中国人民解放軍の空中戦闘能力を再評価する必要があるかもしれない。その能力は東アジアにおけるアメリカの空軍力の展開レベルに近づいているか、あるいは上回っている可能性がある」との見方を示した。
アメリカのスティムソン・センターの中国プログラム責任者ユン・スン氏は、「中国製J10とPL15の驚くべき勝利は、台湾有事の際の軍事力バランスを再考させるだろう」と指摘している(ウォーゾーン)。
◆輸出市場での展望
ブロンク氏は、J10Cの将来的な展開について、中国人民解放軍空軍が新たなD型を求める可能性は低く、むしろ輸出市場に力を入れるだろうと予測している(同)。
「J10Cは1機あたり5000万から6000万ドル(約72億から87億円)で提供できるだろう」とブロンク氏は述べ、これは「老朽化したMiG29、Su27、Su30を代替したい非アメリカ・非欧州同盟国にとって非常に競争力のある選択肢になる」と分析している(同)。
中国は世界第4位の武器輸出国だが、その輸出の半分以上がパキスタン向けで、残りはほとんど小規模な発展途上国向けだ。しかし、J10Cの実戦での成功が確認されれば、中国の武器輸出市場での存在感は大きく向上する可能性がある。