「SNSから米政権批判消すように」留学前の仏人学生に大学から勧告

Thaspol Sangsee / Shutterstock.com

 アメリカは2019年から、外国からのビザ申請者に、SNSのアカウント申告を義務付けている。2019年当時の大統領はトランプ氏。そうして同氏が再び大統領に返り咲いた今、SNSアカウントの監視をさらに広げようとしている。

◆グリーンカード申請者にも申告義務か
 移民当局は3月5日、グリーンカード(永住権)、市民権、亡命・難民の申請をする際に、SNSアカウントの申告を義務付ける方針を提案した。現在はまだ提案の段階ではあるが、早ければ5月5日にも実施される可能性があり、350万人以上の人々に影響を与えると見られている(フランス・アンテール)。

 提案の理由は、移民関連の給付金を申請する人に対して厳格な事前審査を行うためだという。だが、移民を支援する団体らは、大統領がネットワークおよび自分を批判する人々を掌握しようとしていると捉えている。団体の一つカタライズ・シチズンズのロペス代表は、ニュースサイト『ザ・ヴァージ』に「トランプ氏はソーシャルメディアを監視の罠に変えている」と語る。

◆国防省はAIを使って留学生の言論取り締まり
 その一方で、ニュースサイト『アクシオス』は3月、国防省が人工知能(AI)を活用した「キャッチ・アンド・リボーク」の取り組みを開始すると報じた。これは、AIが外国人のSNSアカウントをチェックして、ハマスやそのほかのテロ組織を支持している可能性があるとみなした場合、その外国人のビザを取り消すというものだ。そのためすでに学生ビザ保持者たちは委縮し、イスラエルを批判する攻撃活動を避け始めているという。

 イスラエルを批判することと、ハマスを支持することは、当然ながらイコールではない。だが、アメリカの世論調査によれば、多数の有権者は「ハマス支持」と「パレスチナ人支持」を区別していないという事情もある。

◆米入国前にメッセージや閲覧履歴の削除が必須に?
 筆者が話を聞いた、アメリカへの交換留学を控えたフランス人学生は先日、フランスの大学から「合衆国入国検査について重要な」勧告メッセージを受け取った。そこには、「最近、特に個人情報とデジタルコミュニケーションの検閲が厳しくなっている」ことを鑑み、「現政権の批判と取られ得る発言および閲覧履歴をすべて削除することを強く推奨する」と太文字で書かれていた。

Text by 冠ゆき