ウクライナ、米供与の長距離ミサイル「ATACMS」での攻撃強化 クリミアなどで成果

Wikimedia Commons

 アメリカがウクライナに提供した長距離戦術ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」が、威力を発揮している。最大300キロ超の射程を生かし、クリミア半島のロシア軍施設などへの攻撃で成果を挙げている。

◆米の提供開始で転機
 ウクライナは強力な長距離兵器を自国で生産しておらず、西側の同盟国に依存している。この状況は、ロシアとの戦闘においてウクライナの足かせになってきた。だが、米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、昨年末に状況が変わったと指摘する。バイデン大統領がウクライナに対し、射程約160キロ版のATACMSの提供を承認した。同紙によると今年4月には、射程300キロ版を秘密裏に提供している。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によるとウクライナは4月、ATACMSの長距離版を初めて使用し、クリミアの空軍基地を攻撃した。ロシア軍の先進的な防空ミサイル発射装置複数とレーダーを破壊したとウクライナ当局者は述べている。

◆クリミアの拠点をターゲットに
 また、5月下旬にもウクライナ軍関係者は、同軍がクリミア南部・セヴァストポリの港を攻撃し、戦艦に損害を与えたと発表した。WSJは、使用された武器についてウクライナ側は明言していないとしている。ただし、ロシア当局者は攻撃があった夜、9発のATACMSミサイルを撃ち落としたと述べている。

 ATACMSはトラック後部に積載して発射されるため、非常に機動性が高く、イギリスやフランスのミサイルよりも速く飛行する。そのため、ロシアにとってはミサイル防衛システムを用いても、撃ち落とすことが難しい。

 ウクライナはロシアが占領しているクリミア半島に対し、集中的にATACMSを使用している。ロシアは今月、ATACMSミサイルによる攻撃を受けたと複数回発表した。NYTは、クリミアはロシア軍への南東部の補給拠点であり、ミサイルやドローンの集中地帯でもあると解説する。

◆東部ルハンスクでも
 さらに、ロシアのユーリ・コテノク戦争特派員は28日、ロシア占領地のルハンスク郊外で、大規模な火災を伴う爆発が発生したと述べた。米ニューズウィーク誌によると、コテノク氏は自身のテレグラムチャンネルで、この攻撃はウクライナによって行われたものであり、ATACMS弾道ミサイルまたはHIMARS(M142高機動ロケット砲システム)が使用された可能性があると伝えている。

 善戦が報じられる一方で、米ニューヨーク・タイムズ紙は、依然ロシアが大きな優位に立っていると指摘する。アメリカはウクライナに対し、ロシア本土を標的としたATACMSの使用を許可していない。

 ATACMSを手に入れたウクライナだが、防戦一方の戦局に苦しめられている。

Text by 青葉やまと