中国の謎のステルス艦が初航行 造船技術が急発展

056型コルベット|Visions of Asia / Shutterstock.com

 海外軍事ニュースメディアの間で5月、中国の新型コルベット艦が初航海に出たとの情報が報じられた。昨年11月、中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」に投稿された画像を通じ存在が明らかになっていた、ステルス艦とみられる。迅速に建造された本艦は、拡大する中国の軍事力を象徴していると海外メディアが報じている。

◆スウェーデン海軍の所有艦に類似
 米ウォー・ゾーン誌によると、新たに建造されたのはステルス性能を有するコルベット艦だという。スウェーデン海軍のヴィスビー級コルベットとデザインが酷似しており、主砲は使用しないときはキューポラ内(小型の砲塔)に格納され、視認が難しくなる。また、この艦は低視認性(ステルス性)を重視した設計となっており、喫水線より上部が内側に傾斜している。全長約97メートルと推定されている。


 ユーラシアン・タイムズは画像を解析し、特徴的な砲塔のデザインが、スウェーデンのヴィスビー級コルベットのボフォース57mm速射砲を思わせると報じている。記事によると、主砲後部と艦橋前方に、ミサイルの垂直発射装置(VLS)を格納すると思われる高架があるという。また、艦尾には近接防空ミサイルシステム「HQ-10」ランチャーを搭載している可能性があるという。

 海軍情報サイト『ネイバル・ニュース』は昨年11月、同艦の画像を報じていた。画像が撮影された大連・遼南の造船所は、中国海軍(PLAN)の旅順海軍基地に隣接している。遼南は、PLANの軽フリゲート艦「056型」と「56A型」コルベットの大規模建造計画の一翼を担っている。

◆目的は未詳も、テスト用途の可能性
 海軍防衛専門家のアレックス・ラック氏は、ユーラシアン・タイムズに対し、中国の新造艦が音響などを抑えるシグネチャー・リダクションに注力しており、ステルス技術を使用している可能性が高いと指摘した。また、航跡を分析し、高圧の噴流で推力を得る「ウォータージェット推進」を採用している可能性を示唆している。

 中国の軍事オブザーバー、アンドレアス・ルプレヒト氏は、この艦船の目的について、非公開の「総合テストプラットフォーム」の役割を担う可能性を示唆している。

 新アメリカ安全保障センター(CNAS)のトム・シュガート氏も、艦の目的は現時点で未確定であるとしながら、「このデザインはある種のテストプラットフォームかもしれない。あるいは、中国海軍の次期コルベット級かもしれない」と述べている。

◆迅速に発展する建造技術
 ウォー・ゾーン誌は、開発が驚異的な速さで進んだと指摘する。昨年8月時点で建造中だったが、わずか9ヶ月後の今年5月には海上試験を行っている。中国の造船能力は急速に拡大しており、米海軍情報局は約1年前に、中国の造船能力は米国の200倍以上であると警告していた。また、中国は質と量の両面で向上しており、より高性能な艦船の建造も可能になっている。これに対し、米海軍の新型フリゲート艦の建造は当初のスケジュールを大幅に遅れている、と同誌は指摘する。

 中国の軍事船については、3隻目の空母「福建」が最近、8日間の初航海を終えて帰港している。ユーラシアン・タイムズは、中国の造船における技術革新は、「アメリカに匹敵する強力な海軍大国として、世界の舞台における中国の地位をさらに強固なものにする」と論じる。

Text by 青葉やまと