「世界の工場」でなくなる中国

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 「世界の工場」としての中国が終わりを迎えようとしている。中国の国家外貨管理局が最近公表した2023年の国際収支統計によると、外資企業による直接投資が前年比82%減の330億ドル(約4.9兆円)になったという。新たな投資より、撤退や事業縮小など脱中国の動きが活発化した形となったが、この動きは今後も続くことだろう。

◆減速する中国経済と先行きの不透明感
 外国企業の中国への投資意欲が減退している背景はいくつがあるが、まずは減速する中国経済と先行きの不透明感がある。以前の中国の経済成長率は10%前後と高い水準を維持していたが、近年は5%程度に鈍化。不動産バブルの崩壊や若年層の高い失業率などが追い討ちをかけ、今後の先行きは決して明るくない。ゼロコロナ政策によって市民や企業は活動を厳しく制限され、中国国民の経済的不満も膨れ上がっている。中国経済の状況は、明らかに外国企業の投資意欲を減退させており、世界の工場だった姿は見えなくなってきている。

◆中国による経済的威圧への懸念
 また、中国による経済的威圧への懸念が強まり、中国依存から脱却しようとする動きが外国企業だけでなく日本企業にも広がっている。

 アメリカのバイデン政権は2022年10月、先端半導体が中国によって軍事転用されるリスクを回避するため、先端半導体関連の対中輸出規制を強化した。しかし、アメリカ単独の規制では、中国が先端半導体そのものを獲得できたり、製造に必要な材料や技術、専門家が流出したりする抜け穴があると判断したバイデン政権は昨年1月、先端半導体の製造装置で高い世界シェアを誇る日本とオランダに対して同調するよう呼びかけた。日本は3月にその要請に応える形で対中輸出規制を開始することを発表。7月下旬から回路幅が14ナノメートル以下の半導体向けの製造装置、繊細な回路パターンを基板に記録する露光装置、洗浄・検査に用いる装備など23品目で対中輸出規制を開始した。

Text by 本田英寿