リスクとなるイスラエル・ネタニヤフ政権

Ohad Zwigenberg / AP Photo

◆懸念されるイスラエルとイランの衝突
 そして、今日最も懸念されるのがイスラエルとイランの軍事衝突だ。ヒズボラやフーシ派の背後にイランの存在があると認識するイスラエルは、最近もシリアにあるイラン革命防衛隊の拠点を空爆するなど、対イランで自制しようという姿勢を一切見せない。イランはイスラエルとの軍事衝突によるリスクを認識しており、現在イスラエルはイラン以上に抑制の利かない国と化している。

 仮に、イランがイスラエルの安全保障を直接脅かすような行動を取れば、たとえそれによる被害が少なくても、ネタニヤフ政権がそれ以上の攻撃をイランに加えるリスクが現実的に考えられる。イスラエルはこれまでも核開発者の殺害など要人暗殺をイランに仕掛けたことが指摘されるが、そういった行動にもネタニヤフ政権は躊躇(ちゅうちょ)しないだろう。

 両国の衝突は中東全体だけでなく、世界経済にも多大な影響を与えることが考えられる。そして、現在のネタニヤフ政権の安全保障観は、「すでにイスラエルは戦争状態にある」というものであり、対イランでも新たな戦争を開始する感覚ではないのかもしれない。今後の動向が懸念される。

Text by 本田英寿