リスクとなるイスラエル・ネタニヤフ政権

Ohad Zwigenberg / AP Photo

 昨年10月、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへ奇襲攻撃を仕掛けて以降、イスラエルによるガザ地区への攻撃が強化され、パレスチナ側の犠牲者は2万5000人を超えて、国際社会ではイスラエル批判が高まっている。戦闘開始から3ヶ月が過ぎるなか、我々はリスクとしての「ネタニヤフ」に直面している。

◆起爆装置となるネタニヤフ
 戦闘開始から3ヶ月が経過し、すでにイスラエル側の攻撃は自衛権行使を超えた過剰行為でしかなくなっている。最近はアラブ諸国だけでなく、イスラエル支持の立場に徹するアメリカのバイデン政権からもイスラエルのネタニヤフ政権に対する苛立ちの声が広がっている。バイデン政権としては、ここまでネタニヤフ政権が強硬姿勢を崩さないことを予測しておらず、今後は対米不信が国際社会の間で広がることを強く警戒し、現在難しい舵取りを余儀なくされている。

 過剰防衛を続けるイスラエルに対し、レバノン南部を拠点とするヒズボラ、イエメン南部を拠点とする親イラン武装組織フーシ派などは、反イスラエル、反米闘争をエスカレートさせている。ヒズボラはイスラエル領内へのミサイルやドローンを駆使した攻撃を強化し、イスラエルもそれに応戦している。フーシ派は紅海やアデン湾を航行するイスラエル関連船舶への攻撃を強化し、最近は米英軍がフーシ派の拠点を空爆するなど、ネタニヤフの強硬姿勢は戦火を拡大させている。極論になるが、ネタニヤフ政権がここまで強硬姿勢に徹しなければ、戦火の拡大は防止できた可能性が高い。今日、イスラエル・ネタニヤフ政権は一つのリスクとなっている。

Text by 本田英寿