米中関係に見えた「管理」、来年の日中関係のキーポイントに

出典:首相官邸ホームページ

 2023年も残り数週間となった。今年、世界の安全保障の関心はウクライナと台湾に集まっていたが、10月にイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘がエスカレートして以降は中東に向けられ、ウクライナのゼレンスキー大統領は欧米による支援疲れがいっそう進むのではと懸念を抱いている。一方、今年の米中、日中関係についてどのような進展や課題が浮き彫りになったのだろうか。

◆今年の米中関係 キーポイントは管理
 近年、米中はあらゆる分野で対立と競争を展開しているが、今年の米中関係を観察してきて最も印象的だったのは、管理だろう。アメリカはウクライナ支援において主導的役割を果たし、中東問題ではイスラエル寄りの姿勢を堅持している。しかし、ウクライナ支援をめぐっては国内から疑念の声が拡大し、中東問題では過度にイスラエル寄りの姿勢を取るとアラブ諸国などグローバルサウスから対米不信が広がる可能性もあり、難しい立ち位置にある。

 その状況下において台湾で軍事的緊張が高まると、アジア問題へも関与することを余儀なくされる。アメリカとしては、3正面対処は避けたいのが本音であり、中国との対立が偶発的な軍事衝突など不測の事態に発展しないよう、関係を管理する必要がある。

 これは国内の経済的難題に直面する中国にも同じことが当てはまり、米中関係が極度な緊張下に陥れば、鈍化する中国経済への悪影響は避けられず、中国としてもアメリカとの関係を管理する必要性に迫られている。11月の米中首脳会談でも、軍当局者同士の対話再開で一致し、人工知能分野の規制や温暖化対策など協力できる分野では接近しようとする動きが見られたが、これらの動きは双方に関係を管理しようとする意思があることを裏付ける。無論、中国の核心的利益に触れるなどの事態が深刻化すれば、管理は難しくなる。

Text by 本田英寿