米中首脳会談、「安定化」目指す米中それぞれの思惑とは

Doug Mills / The New York Times via AP

◆接近する米中それぞれの思惑
 今回の会談では、従来のように、アメリカは台湾周辺での軍事行動を自制するよう呼びかけ、中国は内政問題である台湾に干渉しないようけん制した。しかし、そのような姿勢を示したのにはそれぞれの狙いがある。

 ロシアによるウクライナ侵攻以降、アメリカは先頭に立ってウクライナへの軍事支援を行い、最近の中東情勢ではイスラエルの自衛権を支持しつつ、イスラエルによる過剰な行動を抑えようとしている。そのようななか、台湾問題で大きな緊張が走れば、バイデン政権は同時に3正面に対処する必要性に迫られる。アメリカとしてはこれ以上難題を抱えたくないのが本音であり、よって現在は中国との関係を「安定化」させておく必要がある。

 一方、中国にも中国なりの事情がある。中国の経済成長率は以前のような10%台とはほど遠く、今後は5%前後で推移していくといわれる。不動産バブルが崩壊し、20歳前後の若年層の失業率が20%を超えるなか、習政権としては国内経済のこれ以上の悪化を避ける必要がある。近年は、経済的威圧や改正反スパイ法施行などにより、外国企業の対中投資額も低下傾向にあり、習政権としてはこれ以上、外資が中国から離れないよう抑える必要がある。サンフランシスコ滞在中、習氏が米大手企業経営者たちと夕食会に参加したのも、米企業による投資を再び拡大したいからだ。よって、アメリカとの関係において、最悪のケースを回避し、協力できる範囲で協力する姿勢を示したのだ。

Text by 本田英寿