イランのジレンマ 激化するイスラエルの攻撃

イランの最高指導者ハメネイ師|Office of the Iranian Supreme Leader via AP

 イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの戦闘が始まって、早くも1ヶ月が過ぎようとしている。今回の衝突の発端は、ハマスがイスラエル領内に向けて数千発のロケット弾を発射したことだが、すでにパレスチナ側の犠牲者数はイスラエル側の10倍近くになり、その差は開く一方だ。最近では国際社会でイスラエルへの非難の声も強まっており、ガザ地区の人道的被害が拡大している。一方、これまでハマスを支援してきたイランは今頃何を考えているのだろうか。

◆イスラエルをけん制するイラン
 イランは長年ハマスを支援し、イスラエルと犬猿の仲にあることから、イスラエル軍によるガザ地区への空爆を強く非難している。イランはイスラエルの存在を認めておらず、パレスチナ人の領土奪還を目指して武装闘争を続けるハマスを支えてきた。そのハマスやパレスチナへの過剰な攻撃をいとわないイスラエルに対しイランは不満を募らせ、イランのアブドラヒアン外相は先月、「イスラエルがガザ地区で空爆や戦闘を続ければ我々は傍観者ではいられなくなる」とけん制。イランの最高指導者ハメネイ氏も、ハマスによる攻撃にイランは関与していないとする一方、ハマスによる奇襲攻撃を称賛し、イスラエルの攻撃を強く非難した。

◆激化する親イラン武装勢力による攻撃
 一方、レバノンやシリア、イラク、イエメンで活動する親イランの武装勢力は、イスラエルやアメリカ軍基地などを狙った攻撃をエスカレートさせている。レバノンのヒズボラはイスラエル北部へロケット弾などを発射し、イエメンのフーシ派も距離はあるもののイスラエルに向けて攻撃用ドローンやミサイルを発射している(アメリカ軍やイスラエル軍によって撃墜)。イラクでは親イランの武装勢力がアメリカ軍基地などを繰り返し攻撃している。各地の親イラン勢力による攻撃は自主的に行われているものであり、イランが直接関与しているわけではないが、こういった勢力がイスラエルに脅威を与え続けることはイランにとって都合の悪いものではない。

Text by 本田英寿