目立った空席…ゼレンスキー氏の国連演説から何が見えたか
◆価値や理念ではなく実利を重視する途上国
国連加盟国の大半は途上国であるが、ウクライナ侵攻からすでに1年半が経過するなか、ロシアへの制裁を実施しているのは日本を含め国連加盟国193ヶ国中40ヶ国ほどにとどまり、そのほぼすべてが欧米諸国だ。要は、それ以外の諸国は侵攻を非難する決議では賛成に回るものの、エネルギー分野を中心とするロシアとの経済関係から、それ以上のことは何もしていない。
中国やインドは侵攻後むしろロシアとの経済的結び付きを強化しており、ウクライナとも一定の距離を置いている。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)やアフリカ、中南米の途上国の多くは、ウクライナ戦争や米中対立など大国間の問題に巻き込まれたくないというのが本音で、戦争を終結させるため侵略されているウクライナにも停戦を求める国もある。
実際、ゼレンスキー氏の演説ではこういった途上国の欠席も目立った。途上国の間では、「なぜウクライナ問題だけがこれほど注目されるのか」「我々の国が内戦やテロで苦しんでいた時に世界は無関心だった」と不満や憤りを持つ国も少なくない。多くの途上国は価値や理念ではなく実利を重視し、国益を最優先に外交を展開している。今回のゼレンスキー氏の演説からは、分断が一層進む世界が浮き彫りとなったと言えよう。
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