ロシア勢力圏に逆戻りするジョージア 国民はEU入り希望も

ジョージアのガリバシビリ首相(2022年9月)|Alexandros Michailidis / Shutterstock.com

◆権威主義復活か? 米欧が懸念するロシア寄り与党
 ジョージアは、EU加盟を目指しつつもロシア寄りになっており、このままでは権威主義へ転落するのではないかという見方を、米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)は示している。

 与党「ジョージアの夢」は、創設者でありロシアで財を成した億万長者、ビジナ・イワニシビリ元首相からいまだに多大な政治的影響を受けている。同氏の主要目的はロシアとの関係正常化で、ジョージア政府はウクライナ支援と対ロ制裁には消極的だ。(CFR)

◆野党の力不足も要因……加盟できても権威主義へ向かう?
 もっとも、共和党国際研究所が行った世論調査によれば、ジョージア人の89%はEU加盟を望み、80%が北大西洋条約機構(NATO)加盟を望んでいる。たびたび国内で大規模なデモが起きていることからもわかるように、66%はジョージアが間違った方向に進んでいると回答。63%が最も重要な政治的パートナーはEUだとし、87%が最大の政治的脅威はロシアだとした。(オンライン紙『シヴィル・ジョージア』)

 ロシアに対する国民の不信感が高いにもかかわらず、ジョージアの夢の支持率は野党よりも高い。カーネギー国際平和基金のサイトに寄稿したジャーナリスト、アレクサンドル・アタスンツェフ氏は、野党にも問題が山積しており、親ロシアの当局を非難し続けても支持が得られていないと指摘する。昨年末の調査では、回答者の半分が満足できる政党はないと答えたが、ジョージアの夢は野党連合よりも4倍も人気があったという。

 EUも、現在のジョージアには頼れる代替勢力がないという認識だという。よってジョージアの夢としては、権威主義的傾向に身を任しつつEUの要求に応えるという、バランスを取る行動を続けることになりそうだとアタスンツェフ氏はみている。

 一方EU側は、加盟候補国の地位を認めれば、ジョージアの夢は民主主義に背を向け権威主義を強めるかもしれないとみる。しかし拒否すればジョージア市民から希望が失われ、与党との対立がさらに激化し、制御不能な出来事のスパイラルの引き金になる可能性もあるとする。(ガーディアン紙

 CFRは、ジョージアが独裁政治に逆戻りし再度ロシアの影響圏に倒れ込めば、東欧、さらにそれ以東の国々にとって、危険な前例を作ることになると懸念している。ジョージアの動向は、今後とも注視に値する。

Text by 山川 真智子