形勢変わる米中対立 中国が各地で攻勢、アメリカに焦りの色
米中対立は軍事、安全保障、経済、貿易、人権、サイバー、宇宙、先端技術、援助など多方面で展開されている。アメリカは現状維持を、中国は現状打破をそれぞれ狙っているわけだが、今日の対立関係のなかで両国の立ち位置に変化が生じてきているように感じる。中国優勢、アメリカ劣勢という構図だ。
◆中国との緊張悪化を避けたいアメリカ
6月初めにシンガポールで開催されたアジア安全保障会議で、アメリカのオースティン国防長官は中国の李尚福国務委員兼国防相と二国間会談を要請したが、中国側はそれを拒否した。会議前後には、南シナ海上空で中国の戦闘機が米軍の偵察機に急接近し、台湾海峡では中国の軍艦が米海軍のミサイル駆逐艦に140メートルのところまで異常接近するなど、挑発をエスカレートさせた。これについてアメリカは、中国軍の攻撃性が増大していると強い懸念を示している。
そのようななか、ブリンケン国務長官が今月18日から2日間中国を訪問して、中国政府の高官と会談する。今回の会談はアメリカ側から打診したとみられるが、アメリカとしては一連の出来事もあり、偶発的な衝突によって米中関係が制御不能のところまで到達することへの強い懸念がある。当然、中国側にもそれはあるわけだが、最近の流れからはどうも「中国に寄り添う」アメリカの姿が色濃く映る。
◆中東からアメリカを揺さぶる中国
そして、アメリカの焦りはほかの地域からも見えてくる。たとえば、最近ブリンケン国務長官がサウジアラビアを訪問したが、その目的はサウジアラビアをアメリカの友好国としてとどめておくことだ。イラク戦争やイスラム国との戦いの終了(依然として米軍は小規模ながらイラク・シリアで対テロ作戦は続けているが)、シェールガス革命などによってアメリカの中東への関心は薄まり、「アメリカが影響力を持つ中東」は終わってきている。
一方、中東では中国が経済分野で存在力を強め、サウジアラビアやイラクなどは近年中国との関係強化を進めている。中国はサウジアラビアとイランという中東2大国の外交関係の正常化で主導的役割を果たすなど、同地域で存在感を高めている。最近アラブ諸国のなかでは、価値観を押しつけてくるアメリカにつくより、経済という実利で関係を強化してくる中国についた方がよいとの見方も広がっている。アメリカは現在の中東秩序に焦りを感じている。
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