尹政権で冷え込む中韓関係

晩餐会での米国のバイデン大統領(左)、韓国の尹大統領(4月26日)|Susan Walsh / AP Photo

 台湾や半導体などをめぐって米中の対立が深まるなか、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は米中対立のなかで韓国の立ち位置を大きくシフトさせようとしている。日本と同様に、韓国は安全保障をアメリカに依存する一方、経済では中国との関係を重視してきた。中国をめぐる問題で難しい立場にあっても、韓国は経済的関係から中国の神経を逆撫でするような反応は控えてきた。しかし、これまでの尹大統領の主張や行動を見てくると、今後両国関係は冷え込む気配が強まってきた。

◆国賓待遇で招待された尹大統領
 その尹大統領は4月下旬、アメリカから国賓待遇で招待され、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談した。毎度のことではあるが、両大統領は会談では核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮を非難し、核兵器を搭載可能なアメリカの戦略原子力潜水艦を韓国に派遣するなど対北朝鮮でいっそうけん制を強めていくことで一致した。そして、対北朝鮮では日本を加えた日米韓3ヶ国が連携する重要性も共有された。米韓の首脳会談で日本の重要性がここまで指摘されるのは極めて稀だが、筆者には今回の米韓会談が日米会談のように映った。

 そして、今回の米韓首脳会談で最も印象に残ったのが、台湾海峡の平和と安全について強い懸念が示されたことだ。両大統領は会談で台湾問題についても話し合い、台湾海峡の平和と安定の維持が地域の安全と繁栄に不可欠だと確認した。また、尹大統領は米メディアからのインタビューに、力による現状変更には反対だと名指しはしなかったものの中国への不満を示した。

 その後、尹大統領を歓迎する晩餐会が開催され、尹大統領がピアノの伴奏に合わせて1分ほど歌うなど晩餐会は和やかなムードで行われた。バイデン大統領が尹大統領を親友と呼ぶ姿も見られ、まるで小泉・ブッシュ、安倍・トランプ時代の日米関係のような光景がそこにはあった。

Text by 本田英寿