悪化する豪中関係 豪市民の間でも中国警戒論拡大
◆南太平洋の安全保障で悪化する豪中関係
また、南太平洋の安全保障問題も関係悪化に火をつけた。オーストラリアは南太平洋を裏庭と位置づけているが、西太平洋での影響力拡大を目指す中国は、21世紀に入ってその南太平洋へのテコ入れを強化し始めた。
シドニーに拠点を置くシンクタンク「ローウィー研究所(Lowy Institute)」によると、中国は2006年からの10年間で、パプアニューギニアに6億3200万ドル、フィジーに3億5900万ドル、バヌアツに2億4300万ドル、サモアに2億3000万ドル、トンガに1億7200万ドルなど莫大な資金援助を行い、各国で政治経済的な影響力を強め、オーストラリアはそれに危機感を強めてきた。
オーストラリアの国防当局も 2018年4月、バヌアツでの基地建設など中国が軍事的な覇権拡大に関心を寄せていると警戒感をあらわにし、最近では中国との関係強化を進めるソロモン諸島に対して、中国との過剰な関係強化を控えるよう警告した。
◆中国製品からの離反 市民の間でも拡大する中国警戒論
上述のようなこともあり、オーストラリアは中国製品からの離脱も進めている。オーストラリアは2月、安全保障上の理由から政府機関に設置されている中国製監視カメラをすべて撤去する方針を明らかにした。撤去される監視カメラは、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)と浙江大華技術(ダーファ・テクノロジー)の製造した監視カメラ900台あまりになる。アメリカとイギリスも昨年11月、中国製の監視カメラに対して同様の措置を取っており、それに歩調を合わせる形になった。
中国への警戒感はオーストラリア市民の間でも広がっている。同様に、ローウィー研究所が昨年夏に公表した世論調査によると、2021年にオーストラリアが米英とともに創設した安全保障枠組み「オーカス」によって豪軍が原子力潜水艦を導入する件について、7割の回答者が賛成の立場を示し、台湾有事が発生した場合に豪軍が関与するべきかについては51パーセントの回答者が賛成した。この数字は3年前に実施した時より8パーセントも増加しており、市民の対中警戒感は強まっている。中国の海洋覇権に直面する日本にとって、同じインド太平洋国家であるオーストラリアとの安全保障協力はこれまで以上に重要になっている。今後は米軍だけでなく、日本独自でオーストラリアとの防衛・安全保障協力を積極的に強化することが求められる。
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