悪化する豪中関係 豪市民の間でも中国警戒論拡大

アルバニージー豪首相(2月13日)|Lukas Coch / AAP Image via AP

 米中対立は台湾問題に代表されるように、政治や安全保障、経済、貿易、先端技術などあらゆる分野で激しくなっている。最近も偵察用気球の問題が大きくなり、訪中を予定していたアメリカのブリンケン国務長官は突如の延期を発表するなど、米中間では協調という文字はますます薄まり、対立一辺倒になってきている。そして、米中が互いを戦略的競争相手と位置づけるなか、中国の戦略的競争相手ではないオーストラリアも近年、中国への警戒感を強めている。

◆コロナ禍によって悪化する豪中関係
 近年、オーストラリアと中国との関係は劇的に冷え込んでいる。コロナ禍に入り、オーストラリアは習政権に対し、コロナ発生源の真相を解明するため世界保健機関(WHO)の査察を受け入れるなど透明性のある調査を要求したが、中国はそれを拒否。対抗措置として石炭や牛肉、ワインなどオーストラリアの主要輸出品の輸入を次々に制限した。オーストラリアのテハン貿易相(当時)は2021年6月、中国がオーストラリア産ワインに対して関税を不当に上乗せしているとして世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。また、ペイン外相(当時)も2021年4月、南東部ビクトリア州が巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国と2018年と2019年に締結した2つの協定を破棄するとも発表した。

 このような関係悪化が影響し、コロナ禍に入った2020年の中国からオーストラリアへの投資額は10億豪ドルあまりにとどまり、2019年比で6割以上も減少した。2020年の中国からの投資件数も20件となり、2016年の111件から大幅に減った。

Text by 本田英寿