注意しなければならない習政権の「軍民融合」政策 日本も標的

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◆多様化する軍民融合
 これら最近の2つの事例はどちらも習政権が強化する軍民融合に関係する。外見は民間技術、民間によって製造されたモノだが、その使途を辿っていくと政治色・軍事色が濃くなり、結局は軍の近代化をもたらす。先端半導体のケースだと、日本はそもそもアメリカに対してノーと言えなくなる。製造装置を中国に輸出して経済的には潤う一方、それがいつの日か国家の安全保障を脅かすことになれば自業自得というしかない。

 だが、日本はもっと身近なところで軍民融合を警戒するべきだ。事例としては、日常生活でのスパイ活動や外国人による土地売買(近年規制する法律が施行)などがあるが、人の安全面という視点からは武装漁民がある。尖閣諸島では依然として中国海警局の公船による領海侵犯が絶えないが、近年海警局の武装化が進み、2021年には海上警備にあたる海警局公船の武器使用が認められた。また、東シナ海で操業する中国民間漁船と乗組員の武装化も進んでいるとされ、沖縄県・先島諸島の漁業関係者の間では安心して仕事ができないなどの懸念が強まっている。

 軍民融合といってもさまざまなケースがあるが、米中対立が今後さらにエスカレートして対中国で日米の結束がさらに強まれば、中国による日本への軍民融合政策があらゆるケースで実施されることだろう。今後とも習政権による軍民融合には注意が必要だ。

Text by 本田英寿