注意しなければならない習政権の「軍民融合」政策 日本も標的

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 中国式現代化、社会主義現代化強国を押し進める習政権にとって欠かせないのが軍民融合である。これは文字通り、民と軍の壁を取り払って民間技術を軍に転用し、反対に軍の力を民間に転用するということだが、これが今日あらゆるところで大きな問題となっている。

◆軍民融合としての半導体、気球
 アメリカのバイデン大統領は昨年10月、AI半導体や3D半導体など次世代半導体の開発に必要な先端技術や製造装置が軍事転用される恐れがあるとして、中国に対する半導体輸出規制を発表した。そして1月、先端半導体や次世代半導体に必要な製造装置で大きな世界シェアを持つ日本やオランダに対し、バイデン大統領は同規制に参加するよう要請した。要請は、岸田首相やオランダのルッテ首相がホワイトハウスを訪問した際に行われたという。

 米中は軍の近代化でも激しい競争を繰り広げているが、その核心となるのは先端半導体だ。AI兵器や自律型誘導兵器などいわゆるハイテク兵器を製造するには先端半導体が欠かせない。アメリカが強く警戒しているのは、中国が独自に先端半導体を開発・生産して軍の近代化を図り、アメリカが軍事的劣勢に陥ることだ。バイデン政権は将来的なリスクを避けるため、今のうちから中国にそれが流入しないよう対策を強化しているのだ。

 また、2月に入り、米モンタナ州上空で発見され、大西洋の米領海上で撃墜された気球をめぐって、米中間で新たな火花が散っている。気球の部品などを調査した米当局によると、気球は中国の軍事偵察用で、宇宙・サイバーなどを担当する人民解放軍の専門部隊が運用に関与し、アメリカの政府機関や軍事施設を偵察する役割に担っていたとされる。

 宇宙の軍事利用を進める中国は、人工衛星を使った偵察行動などを強化しているが、それではアメリカ上空を偵察できる時間が限られ、またその上空を雲が覆えば偵察が難しくなる。そのため、中国軍はそれを補う目的で軍事偵察用気球の開発を強化している。中国は、気球は民間の気象研究用だと主張しているが、この気球は過去何度か日本上空でも確認され、米当局はアメリカだけでなく日本も偵察の標的になっていると発表している。

Text by 本田英寿