ラトビアとエストニア、中国との「16+1」離脱 ウクライナ・台湾問題影響か

ロシアのプーチン大統領(左)と中国の習国家主席(北京、2月4日)|Alexei Druzhinin, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

◆ウクライナ、台湾問題影響か? 立ち位置を明確化
 ラトビア、エストニアの今回の動きは、台湾への軍事的圧力を強め、ウクライナに侵攻するロシアとの関係を強化する中国に対し、欧米諸国が批判を強めるなかで起きたものだとロイターは指摘する。

 ポリティコは、ウクライナ侵攻がソ連帝国復活の前兆となることをバルト諸国は恐れていると指摘。中国がロシアの独裁者プーチン大統領との「無制限の」友好関係を宣言したことは、バルト諸国にとっては受け入れがたいとしている。

 コーネル大学で政治と法学を教えるサラ・クレプス教授は、ウクライナ侵攻やペロシ米下院議長の訪台にともなう台湾海峡の軍事的緊張によって、ラトビアやエストニアなどの国々は「冷戦時代のように特定の陣営に身を置く」ことを迫られたと述べる。これらの国々は自国が民主化推進派であるという明確なシグナルを送ろうとしており、反民主主義国と一緒に並べられたくないのだとする。この先自国が弱体化したとき、アメリカとその西側同盟国が強い防衛力で報いてくれるように、彼らは自分たちの忠誠心を表す方法を考えたいのだと述べている。(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙、SCMP)

 ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院の中国研究ディレクター、アンドリュー・マーサ氏は、ラトビアとエストニアの動きは、地政学的にどちら側であるかを宣言しつつも中国にドアを開いておくことをいとわないことを示すと述べる。両国は自ら離脱を決めたことで安全保障を強化しようとしているが、同時に中国に「建設的かつ実用的な関係」を求めることで、中国の影響圏でバルト諸国が利用できる部分があることも理解しているとシグナルを送っているとした。(SCMP)

◆冷めつつある参加国 次の離脱も……
 2ヶ国が離脱した後は、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアのEU加盟9ヶ国と、非加盟のアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビアの5ヶ国が残ることになる。

 ポリティコによれば、中国はすでに今年の早い段階で参加国が気乗りしていないことを察知しており、4月にベテラン外交官を派遣して、中東欧地域を巡回し関係修復を試みていた。しかしロイターによれば、チェコでは議会でグループからの脱退を求める声も上がっており、同国の外相は5月、中国による大型投資や相互に有益な貿易の約束が果たされていないと不満を述べた。中東欧への影響力を強めるという中国の計画は、思惑通りにはいかないようだ。

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Text by 山川 真智子