ISSを政治利用するロシア、24年以降の離脱を公言 宇宙開発の今後は
◆ISS離脱を政治利用するロシア
クレムリンは7月26日、ロシアの宇宙開発機関であるロスコスモスの新総裁に先日任命された元副首相のユーリ・ボリソフ(Yury Borisov)がウラジーミル・プーチン大統領と会談を行ったと報告。報告に記載された対話記録によると、ボリソフは、今後の宇宙開発は、よりロシア経済のニーズに即したものへと変換されていくべきであると述べた上で、2024年以降、ISSから撤退することを決定したとプーチン大統領に伝えた。これに対して、プーチン大統領は了承を示した。一方、米国は予算を確保している少なくとも2030年まではISSの運営を続けていく見込みで、NASAはロシアからの正式な撤退通知などはないとのコメントを発表している。
ロシアはこれまでもISS撤退をほのめかすような態度をちらつかせてきており、ISSは政治的なカードとして利用されている。2014年のクリミア半島併合の際も、米国に併合を認めさせるプレッシャーをかけるために、ロシアはISSを利用した。その後も、米国の経済制裁に対する交渉カードとして、ロシアはISSからの撤退をカードに脅しをかけた。ISSにおける米国とロシアの担当箇所は意図的に絡み合って相互依存するようにデザインされているため、ロシアがもし実際に撤退する場合は、ISSは運営を中断せざるを得ない状況になる可能性が高い(ロイター)。
ロシアのウクライナ侵攻後も、ISSにおけるロシアと米国のパートナーシップは継続されてきたものの、ロシアとウクライナの戦争の長期化を受けて、ロシアと米国および欧州との間での緊張感はさらに増している。そのようななか、宇宙開発計画に関して、ロシアは新たなやり方を模索しているようだとヴォックスは分析する。「国際」と名のつくISSだが、大国中国は参加していない。今後、ロスコスモスと中国の宇宙開発機関である中国有人宇宙機関(China Manned Space Agency:CMSA)が連携を取るという可能性が考えられる。また、ロスコスモスには、2025年までにロシア独自の宇宙ステーションを完成させる計画がある。
今回のロシアのISS撤退の意思表示は政治的なカードに過ぎないのかもしれない。しかし、ロシアと「西」の世界は今後ますます分断を強めていく様相である。
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