南シナ海ハーグ裁定から6年 現状変更の既成事実化を続ける中国

米駆逐艦「ベンフォールド」。13日と16日に「航行の自由」作戦を実施|U.S. Pacific Fleet / flickr

 今年3月下旬から4月上旬にかけ、南シナ海のフィリピンの排他的経済水域内でフィリピンと台湾の大学が合同で海洋調査を行っていた最中、中国海警局の船が異常に接近し、数日間にわたって断続的に追尾する事件があった。フィリピンは中国に対して強く抗議した。

◆今後の南シナ海情勢
 地政学的にみても、中国にとって南シナ海は東シナ海よりも都合がいい場所である。台湾や尖閣諸島、東シナ海周辺はまさに米中対立の安全保障上の最前線であり、中国としても一つ一つの行動には米国や日本の対応を注視する必要がある。しかし、南シナ海は米軍のプレゼンスが常態的にあるわけではなく、争う国もフィリピンやベトナムなどいわゆる中小国であり、政治的にも東シナ海ほど神経を使う海域ではない。

 米軍は時々南シナ海に姿を見せているが、それによって中国による現状変更のスピードが低下しているわけではない。今後も続くのは中国による一方的な現状変更であり、ますます南シナ海で中国の存在感が高まる可能性が高い。南シナ海は日本にとって重要なシーレーン(海上交通路)であり、同海の海洋秩序の悪化は日本にとって大きなマイナスとなる。今後の中国軍の動きを注視していく必要がある。

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Text by 和田大樹