逆戻りする途上国支援 「助ける」薄れ、「対立陣営に負けない」へ
◆遠のく純粋な援助
しかし、最近も打ち出されたG7やクアッドによる支援、援助というものは、冷戦以後の米国を一極とした当時の世界で実施されてきた途上国支援とは意味合いが異なり、米ソ冷戦時の支援、援助に逆戻りしているように感じられる。
それはつまり、米国一極時代から米中大国間競争の時代に移り、一帯一路に代表されるように大国化する中国による途上国援助が存在感を増すにつれ、米国などの自由民主主義陣営はそれに対抗するために独自の支援を強化しているということだ。
オーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」によると、中国は2006年からの10年間でパプアニューギニアに6億3200万ドル、フィジーに3億6000万ドル、バヌアツに2億4400万ドル、サモアに2億3000万ドル、トンガに1億7200万ドルの莫大な資金援助をして南太平洋でプレゼンスを強化してきたが、クアッドが500億ドル以上の支援を打ち出した背景には間違いなく中国に対抗する狙いがある。
当然ながら国によって狙いがあっただろうが、以前の支援、援助というものは途上国を助けるという純粋な意味合いが強かったように思う。しかし、今日の国際政治において、それは対立する陣営に負けない、競争的な意味合いが強くなってきている。G7やクアッドで発表された援助では、「質の良い」という部分が強調されたが、その背後には中国より質の良い援助を実施するという競争的思惑がある。
米中対立は長期的に続く。支援や援助という言葉は、国際政治において今後も競争的意味合いが強くなるだろう。
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