北欧NATO加盟、トルコ「1年遅らせる」と脅しも 反対の思惑とは? 迫るNATO首脳会議

NATOのストルテンベルグ事務総長(6月16日)|Olivier Matthys / AP Photo

◆容認姿勢から転換 権力誇示の機会を逃さず
 エルドアン氏の動きは、事前の容認姿勢から大きく逸脱するものだ。NYT紙はフィンランドのペッカ・ハーヴィスト外相の話として、同国が2月24日の侵攻後に迅速に申請準備を進め、全30のNATO加盟国すべてから事前承認を得ていたと報じている。フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領によると、このなかにはエルドアン氏本人からの確約も含まれていた。NYT紙は「エルドアン氏は彼ら(北欧2国)を阻害することはないとの事前の約束を翻した」と述べ、これにより迅速な加盟承認への期待は「急速に消えつつある」との見方を示した。

 スウェーデン国際問題研究所の上級准研究員であるトルコ出身のジェンギズ・チャンダール氏は、米ヤフーニュース(6月23日)に対し、エルドアンは「(過去を)振り返ることなく、瞬時に180度転換することがある」と指摘する。権力行使の機会があれば逃さない、ともチャンダール氏は加えた。

◆エルドアン氏、北欧は「テロ組織の温床」と主張
 エルドアン氏は、フィンランドおよびスウェーデンが「テロ組織の温床」であると主張し、加盟承認を渋っている。トルコは38年間にわたり非合法武装組織のクルディスタン労働者党(PKK)と戦っているほか、2016年にはエルドアン氏の追放を試みるクーデター未遂が発生している。エルドアン氏は、こうした組織や事件の関係者の身柄引き渡しに北欧が協力してこなかったと主張している。だが、フィンランドのアナリストによると、フェイスブックに大統領の不満を書き込んだだけで身柄引き渡しを求めるなど行き過ぎた要求が多く、到底すべてには対応できないという。

 ガーディアン紙によるとフィンランドのサナ・マリン首相は、「しばらくは(加盟申請が)凍結されるかもしれない」との厳しい見通しを語った。安全保障上の危機を支持率回復の好機と捉えるエルドアン氏に、国際社会からモラルが問われそうだ。

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Text by 青葉やまと