北欧NATO加盟、トルコ「1年遅らせる」と脅しも 反対の思惑とは? 迫るNATO首脳会議

NATOのストルテンベルグ事務総長(6月16日)|Olivier Matthys / AP Photo

 フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)へのスピード加盟に、暗雲が立ち込めている。加盟には全NATO加盟国の承認を必要とするが、加盟国の一つであるトルコが事前の容認姿勢を転換し、北欧2国の加盟は喫緊の課題でないと主張し始めた。トルコ大統領の視線はロシア情勢ではなく、国内の支持率回復を追っている。

◆加盟は1年以上先送りか
 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、フィンランドとスウェーデンはNATOへの早急な加盟を希望している。すでに5月に加盟申請を終え、迅速な手続きを期待していた。しかし、従来から北欧2国に不満を募らせていたトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領がここへきて、直近での加盟承認を見送る考えを示し始めた。英ガーディアン紙(6月14日)によると、トルコ与党・公正発展党のアキフ・チャアタイ・クルチ議員(外交委員会委員長)は両国の加盟を「1年以上遅らせる用意がある」と述べている。

 強行姿勢を示し始めたトルコのエルドアン大統領の狙いは、トルコ国民へのアピールだ。米ニューヨーク・タイムズ紙(6月22日。以下「NYT」)によると、元NATO職員のステファニー・バブスト氏はスウェーデンの放送局によるインタビューに対し、「これは主に国内の支持基盤に向けてのメッセージ」との見方を示した。トルコ経済が非常に厳しい局面を迎え、支持率が低迷するなか、国民に強力なリーダーシップを誇示したい狙いがあるという。

Text by 青葉やまと