ロシア軍、「最恐の通常兵器」燃料気化爆弾を使用か ウクライナが非難
◆強力な燃焼で真空状態に
ロシアのTOS-1兵器システムは、2段階で炸裂する無誘導弾を発射する。着弾すると1回目の爆発を生じ、内部に充てんされたアルミやマグネシウムなどの粉末金属あるいは有機物など、爆発性の高い混合物を周囲に撒き散らす。数ミリ秒後には2度目の爆発を生じてこれらが発火し、巨大な火の玉が出現する。周囲の酸素を大量に消費することで局所的な真空状態を生み、気圧差による強い衝撃波が広範囲に伝播するしくみだ。衝撃は極めて強く、たとえビルの中にいようとも爆発と無縁ではない。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(5月27日)は、火球の直径内にいない人々に対しても「致命的」なダメージを与えるとしている。
燃料気化爆弾の射出に用いられたTOS-1は1980年代に開発され、かつてはソ連の軍事力の象徴でもあった。ただしNYT紙は欠点もあると説明する。射程距離が約10キロと短く、敵陣まで接近する必要があることから、待ち伏せ攻撃に弱い。3月にはキーウ郊外で待ち伏せしていたウクライナ部隊が、実際にロシアの燃料気化爆弾を爆破している。
◆攻撃受けたウクライナ軍、その威力を語る
燃料気化爆弾は広範囲に対して強い殺傷効果を生じる。米インサイダー誌(5月27日)は、「非常に破壊的であり、人体を蒸発させ、内臓をつぶす能力をもつ」と説明している。
実際に攻撃を受けたウクライナ第95旅団司令官のイェヘン・シャマタリウク大佐はNYT紙に対し、「地面の揺れを感じます」「非常に破壊的です。バンカーを破壊します。中にいる者たちの上に崩れ落ちるのです」と証言している。一命を取り留めた兵士たちも、重傷は避けられない。ウクライナ側衛生兵は同紙に、手当した兵士たちに「深い重度の」火傷がみられ、衝撃波による脳しんとうを併発していると語った。
燃料気化爆弾はジュネーブ条約では禁止されていないが、人道的見地から議論を呼びそうだ。
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