昭和天皇とヒトラーを並べた動画、ウクライナが謝罪・動画修正
◆超ウクライナ寄り日本人 失望も大きかった
実は日本では他国に比べ突出してウクライナ侵攻への関心が高いことが、イプソスの世論調査でわかっている。「ロシアのウクライナ侵攻のニュースを追っている」「ウクライナでの戦争は自国に重大なリスクをもたらす」と答えたのはそれぞれ89%、87%で、調査対象27ヶ国の中で最も高かった。さらに、「ウクライナで何もしないのは欧州やアジアでのロシアのさらなる軍事行動を助長させる」としたのは77%で、英米に並ぶ高さだった。日本の世論は非常にウクライナ寄りと言える。
日本政府も同様だ。APは、ロシアのウクライナ侵攻が東アジア、とくに中国の戦略に影響を与える恐れが日本を動かしたと指摘しているが、日本はウクライナに防弾チョッキやヘルメットなどの軍事装備を送り、避難民にも門戸を開くという異例の措置で支援している。
それゆえに、動画はゼレンスキー大統領を強く支持してきた保守派を遠ざける恐れもあったとブルームバーグは指摘している。事実ツイッターでは、動画のせいでウクライナを支援する気が失せたという投稿もあったとしており、これらの反応によってウクライナ政府は謝罪と動画の修正を急いだようだ。
◆戦争責任に見解分かれる 歴史認識問題再燃?
もっとも、今回の事件で日本の対応に疑問を呈す声が海外メディアから出ている。APは、日本は第二次世界大戦を神として崇められていた「裕仁」の名のもとに戦ったとして、戦争における彼の役割に対する歴史的評価は、いまだに分かれていると述べている。今回の動画事件では、天皇は単なる名目上のトップで実権を持たず国の行為に対する責任もなかったという意見や、むしろ天皇よりも戦時中の首相、東条英機が動画にはふさわしかったのではないかという意見が国内では聞かれた。
しかしデジタルメディア『VICE』の取材に答えた明治大学の山田朗教授は、昭和天皇は陸海軍の全権を握る唯一の人物だったと指摘。何が起きていたかはよく認識していたが、戦争の最中でどうしようもないと考えていたと述べている。天皇が軍国主義の全容を知らなかったと主張することで戦時の残虐行為を免責するのは間違っているとし、昭和天皇は国家元首で、国際的、法的見地からヒトラーやムッソリーニと同列に並べることは間違ってはいないと説明している。
APは、日本が動画の修正を要求することは検閲に当たり、ウクライナの譲歩は日本の保守派が戦時中の歴史をさらに書き換えることを助長する、悪い前例になると懸念する声もあったとする。さらに、動画が差し替えられた後もソーシャルメディア上では元の動画が侮辱的だという批判や、ウクライナ支援をやめるべきという意見が止まらないとも述べ、歴史認識が日本でいまもなおくすぶり続ける問題であることを示唆した。
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