ロシアのウクライナ侵攻に沈黙するASEAN諸国、その背景

黒煙の上がるマリウポリの街(4月9日)|Evgeniy Maloletka / AP Photo

◆ASEANが沈黙する経済的背景
 もう一つの背景は、コロナ禍による経済の停滞がある。コロナ禍に突入してすでに2年が過ぎるが、インドネシアやタイなどASEAN各国でも新型コロナが猛威を振るい、結果的に多くの国で国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じた。ASEAN各国ともコロナ禍から早期に抜け出し、各国との貿易往来など経済再生を進めたい願望が強いが、今回のウクライナ戦争には正直落胆していることだろう。こういった大国間紛争という政治問題に首を突っ込むことになれば、欧米などからロシア制裁への協力などそれ相応の対応を取るよう政治的圧力をかけられる可能性もあり、経済再生を重視するASEANとしてはできるだけ外で眺めるというスタンスを重視するようになる。

 プーチン大統領も欧米はロシアを孤立させられないという意思を示しているが、大国間紛争にできるだけ巻き込まれたくないという想いはおそらくASEANだけではないだろう。中東やアフリカ、アジアや中南米にもそういった想いを抱く中小国は多く存在し、今後中国やロシアはそういった国々を取り込みながら自らのグループ形成を強化していくのだろう。

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Text by 和田大樹