なぜ「戦術核」への懸念が高まっているのか ロシアがウクライナで使う可能性は

Mikhail Klimentyev, Sputnik, Kremlin Pool Photo via AP

 ウクライナ侵攻の停滞を受け、ロシアのプーチン大統領が戦術核兵器を投入する恐れが高まっている。大型の戦略核と比較して小型の戦術核だが、実戦で使用されれば放射能汚染は広範囲に及び、戦地に壊滅的な被害をもたらす可能性がある。ロシアがウクライナで核を使用する可能性について専門家らはどのように見ているのだろうか。

◆戦術核兵器とは
 戦術核兵器とは、小型かつ短距離攻撃に特化した核兵器を指す。代表的なものとして中性子爆弾があり、極めて小さな爆風によって広範囲に放射線を放出する。

 長距離弾道ミサイルへの搭載を前提とした核弾頭などの「戦略」核兵器とは対照的に、小型の「戦術」核兵器は、通常のミサイルや砲弾、魚雷など、さまざまな形で戦場に投入される可能性がある。ロシアは約2000発の戦術核兵器を保有しているとされる。

 戦術核兵器はもともと、核抑止力を補強する目的で開発された。都市を丸ごと滅ぼすような大型の核兵器は実戦に投入される可能性が低いため、抑止力に限りがある。そこで、より狭い範囲に甚大な被害をもたらす戦術核兵器により、核の脅威をより現実的なものとする考え方が生まれた。

Text by 青葉やまと