冷戦は終わっていないのか

中ロ合同軍事演習を視察するロシアのショイグ国防相と中国の魏鳳和国務委員兼国防相(2021年8月13日)|Savitskiy Vadim/Russian Defense Ministry Press Service via AP

 ロシアによるウクライナ軍事侵攻は長期化する様相を呈している。諸外国からの軍事支援も影響してか、キエフ制圧などではプーチン大統領が思い描くように侵攻が進んでいない一方、ロシア軍による攻撃が無差別化し、病院や学校なども被害を受けている。加えて核の小規模使用の可能性も浮上するなど、ウクライナ情勢は深刻の度合いを深めている。プーチン大統領も一度侵攻した以上、潔く撤退するという選択肢は取れず、戦争の泥沼化が懸念される。一方、ロシアによるウクライナ侵攻は、本当に冷戦は終わったのかという議論を我々に投げかけている。

◆積もりに積もった不満や怒りが限界に達したプーチン大統領
 今回ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った背景には、プーチン大統領が抱く懸念がある。プーチン大統領は、1991年にソ連が崩壊し、冷戦の勝者となった米国を中心とするNATO(北大西洋条約機構)など自由主義陣営が、東欧諸国を取り込む形でどんどん東へ拡大してきたことに長年強い不満や脅威を感じてきた。自らの勢力圏であるバルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)、ロシアにも近いトルコなどがNATOに加盟したことも大きな要因だろう。そしてロシアの勢力圏のなかでも面積的にも人口的にも大きな存在であるウクライナがEUやNATOに接近する姿勢を示した。このことでプーチン大統領の我慢の限界に達し、今回のウクライナ侵攻に繋がったと考えられる。

Text by 和田大樹