元コメディアンとテック起業家が本領発揮、ウクライナのデジタル・メディア戦略とは

米議会に向けオンライン演説するウクライナのゼレンスキー大統領(3月16日)|Sarah Silbiger, Pool via AP

 戦禍のウクライナを率いる同国の頭首、ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelenskyy)大統領。元コメディアンの大統領は、メディアを活用して世界にメッセージを発信し、支援を呼びかけている。ゼレンスキーと政府の情報発信戦略とは。

◆テレビ慣れした大統領
 ゼレンスキーは、ユダヤ系の両親のもと、旧ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のクルイヴィーイ・リーフ(Kryvyi Rih)で生まれた。2000年、キエフ国立経済大学の法学部を卒業。1997年から2003年の間、コメディーショー『クバルタル95』の俳優、パフォーマー、脚本家、プロデューサーとしてのキャリアを積み、2013年以降、テレビ制作会社クバルタル95のエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。テレビシリーズでは、政治の経験なく大統領戦に出馬する人物を演じることもあった彼は、フィクションを現実化した。2019年の大統領戦に出馬した当時冗談ともみなされていたが、73%の得票率で第6代大統領に就任。当時41歳のゼレンスキーは、同国史上最も若い国家元首となった。

 ゼレンスキーの選挙キャンペーンの公約は、財閥の富豪、オリガルヒが占拠する仕組みを一掃するというものであった。この公約は、当時現職のペトロ・ポロシェンコ大統領を攻撃し、自身を差別化するものであった。この公約が彼を大統領戦勝利に導いた。しかし、2021年に公開されたパンドラ文書によると、ゼレンスキー自身も以前オフショア会社を保有しており、選挙日の数週間前にこっそりと知人に権利譲渡をしていたとされる。またゼレンスキーは事業においてはロシアとのつながりがあることも明かされている(ガーディアン)。

Text by MAKI NAKATA