威力発揮するウクライナ軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」 ロシア装甲車の弱点突く
◆ロシアのほぼすべての装甲車両に有効
対装甲車で強力な性能を誇るジャベリンは、過去20年間でアメリカ軍およびその同盟国20ヶ国ほどに配備された。現在ウクライナ国内にも多くが導入されており、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は同国の安全保障理事会の場で2月28日、ウクライナ軍が一部のNATO加盟国を上回る数のジャベリンを保有していると認めた。ユーロ・ニュースによるとアメリカは今年1月末、ウクライナに300発のジャベリンミサイルを提供したほか、昨年10月にもジャベリンミサイル180発とランチャー30基を提供している。
米シンクタンクのランド研究所の防衛アナリストはジャベリンの効果について、「ジャベリンはおそらく、ロシアのほぼすべての装甲車両に対して相当な効果を発揮します。(戦車などの)対重装甲車においては、ウクライナに存在し兵士個人が携行可能なミサイルシステムとしておそらく最大の攻撃能力を持ちます」と説明している(ユーロ・ニュース)。
ウクライナ国防省は3月1日朝までに、ロシア戦車198台、その他の装甲戦闘車両846台、航空機29機、ヘリ29機を破壊したと報告している。すべてがジャベリンによるものではないが、戦局を相当有利に変化させたとみて間違いないだろう。
◆完全無欠ではないが、高い効果
ただし、ロシア軍のしばしの足止めに成功したジャベリンも、完全無欠の兵器というわけではない。ユーロ・ニュースは「ジャベリンは驚異的な兵器と呼ぶにはほど遠い」とも指摘する。車両への搭載または歩兵による携行の形で使用することになるが、ウクライナ中東部には広大な平原が広がる。強力な装甲車破壊能力を備えているとはいえ、身を隠す場所がなければ直ちにロシア軍の標的となってしまう。また、基本的には戦車や航空機などのサポートを受けながら展開することになるため、いくら個人で携帯可能といえど、実際には機動性に幾分かの制限がかかる。ミサイル自体が非常に高価であることも課題だ。
しかし、非常に限られた兵力をもってロシアの侵攻を足止めする意味では、効率に優れた選択肢となっている。米ナショナル・インタレスト誌はジャベリンの立ち位置について、攻撃の完全阻止ではなくペースダウンを誘発するツールとなるだろうと述べている。ロシア側の攻撃コストを上げるうえで有効な手段となりそうだ。
【関連記事】
ウクライナ戦争に抗議するため、ラジオで反戦歌を流す村上春樹(NewLuxe)
分析:プーチンの誤った歴史観 「常にロシアの一部」ではないウクライナの1000年
ウクライナ情勢:米国バイデン政権の限界が顕著に 加速するGゼロ
戦車の終焉? ナゴルノカラバフ紛争でドローンが戦車を大量破壊
- 1
- 2