国際協調という名の“バイデン流アメリカファースト”

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 バイデン政権の誕生からすでに半年が過ぎ、来年の中間選挙まで早くも1年と迫ってきた。トランプ政権が非常に個性的だったので、バイデン政権になったことで無意識のうちに「これで普通の米国に回帰する」と思った人々も決して少なくないのではないか。大統領選の時からバイデン氏はトランプ政権を非難し、脱トランプを強く掲げ、トランプ流アメリカファーストから国際協調路線に転換することを主張してきた。だが、この半年余りを振り返り、筆者には別の側面が強く映る。

◆国際協調主義の中身はバイデン流アメリカファースト
 バイデン政権はトランプ時代に冷え込んだ欧州との関係改善に努め、イラン核合意は停滞気味だが、パリ協定や国連人権理事会などトランプ政権が離脱した協定などへの復帰を着実に進めている。こう見ると、トランプ政権によって緩んだネジを元通りにして脱トランプ路線を進んでいるように見える。

 しかし、トランプとバイデンでは共通点もある。その代表が対中国であり、バイデン政権もトランプ時代の厳しい姿勢を継承し、とくに新疆ウイグルや香港など人権分野で強く習政権に迫っている。そして、トランプ政権が独自で中国に厳しい姿勢を貫くのと違い、バイデン政権は欧州やオーストラリア、インドなど同じ価値観を共有する国々と結束し、多国間で中国に対抗する戦略をとる。こうみると、バイデン政権は国際協調主義を貫いているように見えるが、その核心は多国間と協力することで中国との競争に米国は負けないというバイデン流のアメリカファーストである。

Text by 和田大樹