東南アジアの邦人にテロ注意情報、その背景にあるものとは
在タイ日本大使館は9月12日、「タイにおけるテロ攻撃に関する脅威情報」を発出し、礼拝場など人が多く集まる場所における自爆攻撃が発生する可能性が高まっているとして、現地に滞在する日本人に注意を呼びかけた。情報源や組織的背景などは明らかにしなかったが、日本、欧米などの関連施設、レストラン、ホテル、公共交通機関、市場、観光施設など不特定多数が集まる場所、軍、警察、治安関連施設をはじめとする政府施設、モスク、教会、寺院などの宗教関係施設などを避けるよう促した。同様のメールは、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポール、ミャンマー各国にある日本大使館も発出している。この背景には何があるのだろうか。
◆アフガン情勢を懸念する東南アジア各国
東南アジアに進出する日系企業は多く、おそらく今回の注意喚起に驚いた企業関係者も少なくないことだろう。東南アジアの日本大使館が一斉にこのようなメールを出すのは、筆者が記憶している限りなかったように思う。しかし、その背景にはいくつかの理由が考えられる。
一つは、日本人24人が犠牲となった9.11同時多発テロからちょうど20年というタイミングである。テロリズムの歴史でも、テロリストは標的とともにタイミングを重視する傾向があり、20年式典が開催されたニューヨークでも警備が強化された。しかし、日本大使館が発信したのは9月12日以降であり、本来であれば9月11日もしくはその直前に発信する方が自然であり、おそらくもう一つの理由の方が大きかったのかもしれない。
その二つ目は、アフガニスタン情勢である。タリバンが実権を奪還したことで、同国が再びテロの温床となるだけでなく、同国内で活動するアルカイダなどのイスラム過激派の活動が活発となり、それが東南アジアで活動するイスラム過激派の士気を高める恐れがあると指摘される。たとえば、インドネシアでは歴史的にアルカイダと関係があるイスラム過激派「ジェマーイスラミア(JI)」、イスラム国を支持する「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」などが活動しているが、インドネシアの治安情報機関は、タリバンの実権奪還によってJIが士気を高め、テロ活動を活発化させるのではないかとネット監視を含め警備を強化している。同国では8月中旬にも治安当局が国内11州で捜索を行い、8月17日のインドネシア独立記念日を狙ったテロを計画していた容疑で53人を逮捕し、うち50人がJI、3人がJADのメンバーだった。
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