閣僚発表に現れた本性 多くの課題を抱えるタリバン
◆前途多難なタリバン政権
信用格付大手米フィッチ・レーティングスの子会社フィッチ・ソリューションズは2日、今後のアフガニスタン経済の成長率が激しく低下する見込みを発表し、今年の成長率はマイナス9.7%、来年はマイナス5.2%になると予測した。それ以前はプラス0.4%になると発表していたが、米軍撤退とタリバンの実権奪還はそれを大きく下げる要因となった。タリバンは諸外国からの投資や支援を得たい考えだが、上述のような閣僚人事発表によって、タリバンが描くような経済支援が安定的に得られない可能性もある。
また、タリバンはスピード劇と言える形でアフガニスタン各地とカブールを制圧したわけだが、その背景にはアフガニスタン軍内での汚職や兵士のモチベーション低下などがあった。アフガニスタン軍は兵士の定員を名目上は定めていたが、実際は何人いるか正確な人数はわからず、名前があるだけで本当はいない兵士の給与を幹部が横領したり、勤務日なのに配置先に来なかったり、突如脱走したりする兵士も多くいた。今回のタリバンの攻勢の際も、隣国のタジキスタンに避難する兵士も多く見られた。
しかし、アフガニスタンを統治していこうとするタリバンは、今後は逆にこういった課題をクリアーしていかなければならない。タリバン内部からイスラム国系組織に離反、加入した兵士も少なくなく、タリバン指導部は汚職や腐敗、経済発展や貧困などアフガニスタンで蔓延する多くの社会的、経済的問題に直面することになる。実権を奪還すること以上に、政権を安定的に運営していくことの方がタリバンにとってはるかに大きな課題となるだろう。
一方、こういった難しい情勢ではあるが、国際社会はアフガニスタンへの人道的な支援は引き続き行っていく必要がある。国連によると、同国では来年までに最大で人口の97%が貧困に陥る可能性があるとされ、人口の半数以上が子供や若者である状況を考慮すると、新世代がテロの世界に入ってしまう恐れは十分にある。多くの課題を抱えるタリバンではあるが、人道的な協力は決して軽視してはならない。
【関連記事】
タリバンはテロ組織と断絶できるのか 第2次政権の行方
タリバン政権を待ち受ける厳しい経済・安全保障問題
タリバンが直面する「20年の変貌」、新価値観で育った若者たち
寒さから病気や死に直面する子供たち、アフガニスタン
- 1
- 2