タリバンはテロ組織と断絶できるのか 第2次政権の行方

ジャーナリストと握手するタリバン報道官(8月17日)|Rahmat Gul / AP Photo

 最後の米軍機がカブールを離れ、9.11テロから20年続いた米国の対テロ戦争が終わった。バイデン大統領は8月31日、米国最長となった戦争の終結を宣言した。確かに、「対テロ戦争」を主導した米国が終結宣言をしたのだから、それは終わったのかもしれない。だが、対テロ戦争は終わっても、アルカイダやイスラム国などの脅威は依然として残っており、タリバンの権力奪還もあり、それは新たなテロのプロローグにしか過ぎないとの見方もある。今後、タリバンが政権を運営していくことになるが、今後の内外情勢でポイントとなるのはテロの温床という問題だろう。

◆各国が求めるテロ組織との関係断絶
 アフガニスタンのテロ情勢について、米国などの欧米諸国はアルカイダやイスラム国、中国はウイグル独立系武装勢力である東トルキスタンイスラム運動(ETIM)、ロシアは南部カフカス地域や中央アジア由来のイスラム過激派をそれぞれ懸念しているように(中露もアルカイダ、イスラム国を警戒)、対テロという問題では対立しあう米国と中国、ロシアの考え方は一致しており、協力・協調できる分野である。対テロでは、タリバン政権との関係構築に前向きな中国やロシアも、タリバンにテロ組織との関係断絶を求めている。これにはバイデン政権も異議を唱えないだろう。

 タリバンとしても、今後の円滑な政権移行と安定的な政権運営を実施していくにあたっては、諸外国からの経済的、人道的支援が欠かせないことから、外交関係の構築を重視してそれを積極的に進めていくと考えられる。また、9.11テロが結果的に自らの崩壊(旧タリバン政権)を招いたという苦い教訓があることから、米国や欧州、中国やロシアが求めるテロ組織との関係断絶を進めざるを得ないという現実的思いを抱えているかもしれない。

Text by 和田大樹