アフガン撤退、バイデン大統領が批判・支持される理由

Manuel Balce Ceneta / AP Photo

 アフガニスタンの反政府勢力タリバンが首都カブールを掌握し、今後新たなタリバン政権が樹立される見込みとなった。今年4月、バイデン大統領はアフガニスタンに駐留する米軍の完全撤退を表明した。しかし、それ以降タリバンはアフガニスタン各地で急速に攻勢を仕掛け、あっという間に現政権を権力の座から引きずり下ろした。この急進劇は、バイデン大統領も予期していなかったと認めている。一方、タリバンが権力を奪取したことで、トランプ大統領などは批判の声を強めている。16日に実施された最新の世論調査によると、バイデン大統領の支持率が前週から7ポイント下がって46%となり、就任以来最低となった。予期せぬスピードでタリバンが実権を掌握したことが支持率の低下に繋がったとの見方が上がっている。

◆バイデン大統領の決断を批判する見方
 バイデン大統領の決断への批判には、いくつかの理由がある。まず、再びタリバン政権になることで、恐怖政治が戻り国民の人権が厳しく抑圧されることがある。これまでタリバン政権下では、男性はあごひげを剃ること、女性は仕事をすることなどが厳しく制限され、窃盗などをすれば腕の切断など一般的には驚くようなことが実行されてきたといわれる。その恐怖が再び訪れることに、アフガン市民の間では懸念の声が強まっている。

 また、テロの問題だ。タリバンはテロ組織との関係を断つと発表しているが、タリバンといっても穏健派もいれば強硬派もいて、またアルカイダなど米国が警戒するテロ組織と関係を維持するメンバーもおり、テロ組織との関係断絶は決して簡単なことではない。今後タリバン政権が長期化すれば、アルカイダなどが勢力を盛り返す可能性も排除できず、米国内ではテロへの懸念が根強い。

Text by 和田大樹