難民危機の再来か アフガン情勢悪化に神経尖らせる欧州
米軍と北大西洋条約機構(NATO)軍のアフガニスタンからの撤退決定を受けて、イスラム主義勢力タリバンが猛攻勢をかけ、権力奪還を宣言した。これにより欧州にアフガニスタンから大量の難民が流入し、再び難民危機をもたらすのではないかという懸念が出ている。
◆強制送還継続希望 難民増加を懸念
アフガニスタンではタリバン政権の復活が確実となり、混乱のなか市民らは離陸する米軍機にしがみつくなどして国外脱出を図ろうとし、その映像が多くのメディアで取り上げられている。この様子を複雑な思いで見ているのがEU諸国だ。
実はすでに2020年には4万4000人のアフガニスタン人がEUに亡命を希望しており、出身地別では2番目に多くなっている。亡命を拒否されれば強制帰国となるが、不安定なアフガニスタン情勢を踏まえ、EU側は加盟国がアフガニスタン人を強制的に帰すことは難しいという見解を示していた。(政治誌ポリティコ)
ところがタリバンの攻勢が始まる以前の8月初めに、ドイツ、オーストリア、デンマーク、ベルギー、オランダ、ギリシャの6ヶ国が欧州委員会に共同書簡を送り、申請を却下されたアフガニスタン人の強制送還政策を継続するように求めた。これらの国々は、送還を停止すれば「間違ったシグナル」を送ることになり、さらに多くのアフガニスタン人が国を離れてEUに向かう動機になると主張。軍撤退を控えた不安定な状況であることは認識しているとしながらも、「迅速かつ効果的な帰還協力を含め」、アフガニスタン当局との対話強化を求めていた。(同上)
その後アフガニスタンの治安状況が悪化したと判断し、フランスとともにドイツとオランダが書簡の求めから一転して強制帰国の一時停止を発表した。もっともシリア難民を大量に受け入れたドイツのメルケル首相でさえも、今後の全員受け入れは困難だとしている。(ユーロ・ニュース)
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