「競争的共存」とは何か? 米中対立の行方

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 近年の米中対立は、経済界でも大きな関心を集めている。海外に進出する日系企業にとっての最大の政治リスクは、米中対立に伴う日中関係の行方といっても過言ではない。4月中旬にワシントンで日米首脳会談が開催され、共同声明では52年ぶりに台湾問題が明記されたが、中国は強く反発し、今後の日本の対応次第ではそれ相応の代償を払うことになるとけん制した。日本経済の対中依存度を考えると、日中のデカップリングは非現実的だが、今後はバイデン政権下の米中対立がどう日中関係に影響していくかを注視する必要がある。また、先月下旬に外務省が発表した外交青書では、昨年に比べ中国の脅威がより鮮明に記されている点も注目すべきである。

◆米中対立をめぐるさまざまな意見
 これまで、多くの専門家やメディアが米中対立の行方についてさまざまな見解を示してきた。自衛隊OBや安全保障の領域では、中国による南シナ海での軍事滑走路や人口島の建設、西太平洋への進出などが注目を浴び、中国を警戒する意識が強い(安全保障上は間違ってはない)。

 一方、中国へ進出する企業のなかでは、政治対立がいくら高まっても中国市場は経営的に重要であり、政治と経済は別物だとする見方も依然として根強い。これは大学や学会などで安全保障研究に従事する傍ら、セキュリティコンサル会社で企業相手にアドバイザーをしている筆者として肌で感じるところだ。専門家によっても、影響力を高める中国に対する脅威論には温度差があり、満場一致の統一的見解があるわけではない。その部分においては筆者もその一人だろう。

Text by 和田大樹