米軍のアフガン完全撤退、懸念される国際テロ情勢への影響

カブールを訪れたフランク・マッケンジー米中央軍司令官(海兵隊大将)(1月31日)|Lolita Baldor / AP Photo

 バイデン大統領は14日、同時多発テロから20年となる9月1日までにアフガニスタン駐留米軍を完全撤退させる方針を明らかにした。バイデン大統領はもう軍事的任務は完了したとその意義を強調したが、筆者を含む多くのテロ研究者はさまざまな懸念を抱いていることだろう。今回の完全撤退決定によって国際的なテロ情勢はどう変わっていくのだろうか。

◆差し迫っていない不気味な脅威として残るジハード組織
 これまでの20年と比較すると、現時点でアルカイダやイスラム国などのジハード組織の脅威はそれほど深刻とは言えないだろう。9.11テロ以降のアフガニスタン戦争で、オサマ・ビンラディンを含む多くのアルカイダ幹部が殺害、拘束され、アルカイダは組織的に弱体化した。いまでも、イエメンのアラビア半島のアルカイダ(AQAP)、北アフリカで活動するマグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)、ソマリアのアルシャバブ(Al Shabaab)、マリを中心にサハラ地域を拠点とするイスラムとムスリムの支援団(JNIM)、シリアのフッラース・アル・ディーン(Hurras al-Deen)など、アルカイダを支持する武装勢力は依然として各地で活動しているが、このような組織の活動はほぼ地域的なものに限られ、国際的なレベルでは深刻な脅威にはなっていない。支配領域をイラクとシリアで失ったイスラム国と各地で活動するイスラム国系組織についても同様のことが言える。

 しかし、問題は攻撃する能力ではなく、意志である。アルカイダやイスラム国などは組織的に弱体化しても、依然として新しい指導者を任命・発表したり、欧米やイスラエルへ攻撃を呼びかけたりする声明を発信し続けている。

Text by 和田大樹