モンテネグロ、中国への債務返済が困難に EUは肩代わりに難色

Anastasia Pelikh / Shutterstock.com

◆未完成でも返済開始 EUは再融資に難色
 実はこの道路はまだ完成していない。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、最初の41キロ区間は1キロあたり2000万ユーロ(約26億円)が費やされており、世界で最も高額な高速道路の一つとなっている。2006年と2012年の調査では、高速道路建設は経済的に実行不可能と結論づけられていたという。

 中国への返済は今年7月に始まるが、人口62万2000人のモンテネグロは、GDPの103%に当たる43.3億ユーロ(約5650億円)の負債を抱えている。新型コロナウイルスの影響で収入源の観光業が大不振で、返済能力は低下している(ロイター)。

 モンテネグロは、加盟候補国としてEUに再融資を求めたが、EU側は道路の残りの建設に90億ユーロ(約1.2兆円)の投資をすることはできるが、第三国からの融資の肩代わりはできないと回答している。EUの報道官は、中国の投資がもたらす社会経済および財政的影響について懸念しており、マクロ経済の不均衡や債務依存のリスクがあると指摘している(ロイター)。FTは、もしもモンテネグロが債務不履行となれば、契約上中国がモンテネグロの土地を取得する権利を持つことができるとしている。

◆中国「偏向報道」、海外メディアに反論
「債務の罠」を懸念する報道に対し、中国政府系メディア、環球時報英語版は、根拠のない懸念にのみ焦点を当て、重要な事実を無視していると断じる。そもそも今回の融資はこの手のプロジェクトにおいては好条件で、中国が決めたのではなくモンテネグロ政府との合意に基づいたものだと主張。どこから融資を受けるにしても、財政難にならないように厳しい基準や条件を守らなければならないという人民大学の研究員、Liu Ying氏の意見を紹介している。

 同氏は、工費が高すぎるという批判に対しても、トンネルや橋が最初の区間の60%を占めており、プロジェクト全体でもっとも困難な部分であることが語られていないと反論。建設は中国企業が行ったが、他国の企業であればコストはもっと高かっただろうとしている。

【関連記事】
“債務の罠”ではない?「中国の途上国融資=悪」に異論
増える中国権益への攻撃 パキスタンで「一帯一路」への反発続く
一帯一路の債務、返済できない国続出 新型コロナで中国の計画に暗雲

Text by 山川 真智子