相次ぐ誘拐事件、ギニア湾の海賊行為が活発化
◆近年ギニア湾では誘拐事件が増加
だがその世界的な傾向にもかかわらず、アフリカ大陸西側のナイジェリア沖のギニア湾では、海賊活動が悪化しており、IMBは2016年の時点ですでに「石油タンカーの略奪よりも、身代金目当ての乗組員誘拐が増えている」と報告している(CNBC、2016/9/19)。
実際、その後も件数は増加傾向にあり、2020年に誘拐された135人のうち130人はギニア湾で捕らわれた者だ。また、現在EU議長国を務めるポルトガルの国防相も「ギニア湾のシーレーンは国際的な海賊行為の主要舞台となった」と認めている。(ドイチェ・ヴェレ、2/21)
2014年以来、EUは海賊対策に5500万ユーロ(約72億円)以上投じ、地域の治安の向上を図っている。今年1月からはこれをさらに一歩進め、同地域で活動しているヨーロッパの海軍艦艇間で海賊情報を交換できるネットワークを築く考えだ。(同)
◆軍事対策だけでは解決できない問題
しかし、アクラにあるアフリカ海事法・安全保障センターのカマル・ディーン・アリ事務局長は、EUの海軍介入が長期的な解決策であるとは考えていない。その理由は、第一に、近隣諸国自身が水域を監視し、治安向上を図る必要があると考えるからだ。(同)
また、アリ事務局長は、人々が海賊行為に走る原因の深さも指摘する。同氏によれば、海賊のほとんどはナイジェリア南部のニジェールデルタ出身だ。実は、ナイジェリアには膨大な石油があるが、掘削によって土地と水が汚染され、この地域で最も重要な経済活動であった漁業も農業も営めなくなった。つまり、多くはほかの収入源を探し、海賊に加わったという背景があるのだ。この根っこともいうべき問題に対処することなくしては、どんなに軍事的対策を強化しても、「海賊行為は増加する可能性がある」と、同氏は考えている。(同)
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