相次ぐ誘拐事件、ギニア湾の海賊行為が活発化

コートジボワールのアビジャンで、海賊対策の訓練に参加した同国海軍とガーナ海軍(2017年3月26日)|U.S. Navy / flickr

 3月11日、ギニア湾でオランダの船「Davide B」が襲われ、15人の乗組員が誘拐された。続いて14日にも、ルクセンブルク籍船が同地域で襲われている。幸いルクセンブルクの船については、巡視船の素早い介入も手伝い、実害なく済んだが、これに先立ち1月23日には、同じくギニア湾で、トルコのコンテナ船「モーツァルト」が襲撃され、ひとりが死亡、15人が誘拐される事件が起きている。

 海賊の常套手段は、「スピードボートで近づき、狙いの船舶に乗り込んで貨物などを盗んだり、乗組員を誘拐して身代金を請求する」というものだ(オフショア・エナジー、2020/6/26)。このような手法で近年増加傾向にあるギニア湾の海賊活動だが、どのような背景があるのか。

◆2010年のピークはソマリア沖
 海賊による襲撃事件は、ピーク時の2010年には445件、2011年も439件を記録しているが、その後は減少傾向が続いていた。ピーク時にはアフリカ東部のソマリア沖が最も危険とされていた。実際、国際海事局(IMB)の報告によれば、2011年は4000人近くの船員がソマリアの海賊による発砲を受けた。また、2011年にソマリアの海賊に人質として拘束されていたのは少なくとも1206人で、そのうち645人は2010年から人質に取られていた船員だ。拘束は平均で8ヶ月に及び、過半数が暴力的な虐待を受けたと報告されている。

 幸い、欧州連合の海賊対策作戦アトランタオペレーションや、軍艦によるパトロールなどが功を奏し、ソマリア沖を含む世界の海賊事件はその後減少傾向に転じ、2016年には191件と1990年代以来の低さを記録。さらに2019年には162件にまで減少した。

Text by 冠ゆき