バイデン政権で初のシリア空爆 イランとの関係の行方は

米軍の空爆で破壊された施設の衛星画像|Maxar Technologies via AP

 ペンタゴンのカービー報道官は2月25日、米軍がシリア東部にある親イランのシーア派武装勢力の施設を空爆したと明らかにした。バイデン政権になって同武装勢力への空爆が実施されたのはこれが初めてとなる。カービー報道官は、2月以降イラク国内で相次いだ米軍関連施設に対する攻撃への対応措置であり、米権益や有志連合国の人員を守るために行動するというメッセージをイランに対して送るものだと指摘した。今回の空爆では、カタイブ・ヒズボラ(Kataib Hizballah)やカタイブ・サイード・アル・シュハダ(Kataib Sayyid al-Shuhada)など親イラン系勢力が利用する施設が標的となったという。

◆中東に広がる親イランのシーア派ネットワーク
 バイデン政権になっても、親イランのシーア派武装勢力による米国権益への攻撃は続いている。イラク北部の都市アルビルでは2月15日、米軍が駐留する施設がロケット弾による攻撃を受け1人が死亡、9人が負傷した。また、22日は首都バグダッドの米国大使館がある旧米軍管理区域(通称グリーンゾーン)に少なくともロケット弾2発が撃ち込まれた。負傷者は出なかったものの、シーア派武装勢力の犯行が指摘されている。

 親イランのシーア派勢力は、カタイブ・ヒズボラやカタイブ・サイード・アル・シュハダに限らない。イランは中東での影響力を拡大すべく、ほかにもイエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラ、バーレーンのアル・アシュタール旅団(AlAshtar brigades)、イラクのハラカット・アル・ヌジャバ(Harakat al nujaba)やバドル旅団(Badr Organization)、シリアのリファ・ファテミユン(LiwaFatemiyoun)などを支援し、また、パキスタンやアフガニスタン出身のシーア派民兵をイラクやシリアに展開させている。

 そして、上述したような組織以外にも、シーア派民兵などはその時々に応じ主体的にグループを組織し、米権益への攻撃を行っている。なかには犯行声明を出す組織もあるが、初めて聞くような名前も多い。

Text by 和田大樹