イラン司令官殺害から1年 トランプは最後に大胆な行動に出るのか

ソレイマニ司令官の葬儀に集まった群衆(1月7日)|saeediex / Shutterstock.com

◆その大胆さを我々は1月3日に見るのか
 ソレイマニ司令官の殺害以降も、当然ながら米イランの緊張は続いている。たとえば、2月中旬には首都バグダッドにある米国大使館付近とイラク軍基地にロケット弾4発が撃ち込まれ、うち2発は米国大使館の敷地内に着弾した。3月中旬にはバグダッド北郊にある米軍駐留基地にロケット弾15発以上が撃ち込まれ、米国人2人と英国人1人が死亡、少なくとも12人が負傷した。こういった攻撃では、イランが支援するシーア派武装勢力「カタイブ・ヒズボラ(KH)」などの犯行が指摘されている。また、3月中旬には「Nujaba Movement」を名乗る別のシーア派武装勢力が、米軍が駐留する基地への攻撃を続けるとする声明を発表した。

 そして、最近でも12月20日、バグダッドにある各国の大使館などが集まる通称グリーンゾーンに向けて複数のロケット弾が発射され、その一部が米国大使館の敷地内に着弾した。これについてトランプ大統領は23日にツイッター上でコメントし、「もし米国人が1人でも殺害されればイランに責任を取らせる」とイランをけん制した。イラン本土への攻撃は中東全体へ緊張が広がることから避けるだろうが、1年前にソレイマニ司令官が殺害されたように、イラクで活動する革命防衛隊や親イラン武装勢力への報復が実施される可能性は十分にある。

 トランプ大統領が、バイデン政権をはじめから揺さぶるために、大胆な行動をとっても不思議ではない。1月3日で革命防衛隊のソレイマニ司令官がイラクで殺害されてちょうど1年となるが、中東では不穏な動きが続いている。

 一方、来年6月18日にはイランで大統領選が実施される予定だ。穏健派のロウハニ大統領に代わって、穏健派と保守強硬派のどちらからリーダーが選出されるかがポイントとなるが、その結果によっては核合意へ復帰する姿勢を示しているバイデン政権との間でも緊張が高まる恐れもあるだろう。

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Text by 和田大樹