イラン核科学者暗殺、高まるイランとイスラエルの緊張

モフセン・ファクリザデ氏殺害現場(11月27日)|Fars News Agency via AP

◆イランによるイスラエル権益へのテロか?
 こういった緊張のなか、イスラエルの国家安全保障当局は12月上旬、外国にいる、もしくは外国に渡航しようとしている国民に対して、イランによるイスラエル権益を狙ったテロが発生する恐れがあるとして警戒を呼びかけた。イスラエル当局はUAEやバーレーンなどの中東各国やアフリカにあるイスラエル大使館、イスラエル企業、またユダヤ教の礼拝所シナゴーグなどが攻撃される恐れがあるとし、クリスマスやユダヤ教の祭日などタイミングにも注意するよう呼びかけた。
 
◆イスラエルはサウジに接近、親イランの武装勢力を攻撃
 また、イスラエルのネタニヤフ首相が11月、極秘にサウジアラビアを訪問して同国のムハンマド皇太子や米国のポンペオ長官と会談したことが報じられた。イスラエルとサウジアラビア、トランプ政権は対イラン包囲網を構築し、圧力をかけ続けてきた。サウジアラビアのサルマン国王も、イラン核開発に断固たる対応を取るよう国際社会に呼びかけている。また、イスラエルは11月にシリアで活動する親イラン勢力へ空爆を立て続けに実施するなど、代理戦争的な手段でイランをけん制している。

 イスラエルもイランも直接的な軍事衝突のリスクは熟知している。よって軍事衝突ほどリスクが高くない暗殺やテロ、代理戦争などの手段を使って相互にけん制し合っている。バイデン政権下ではこういった状況がトランプ政権時より増えるかもしれない。

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Text by 和田大樹